忍者の可能性

山田雄司三重大学人文学部教授

2016.05.20

実在した「忍び」と虚構の「忍者」

 歴史的には忍者は「忍び」と呼ばれ、主君に命じられて敵方の情報を収集することを主要任務とし、そのために堀や塀を越えることもあった。
 そして、時には戦闘に加わることもあったが、それは最終手段であって、逃げのびて戻ってくることを旨としていた。江戸時代になって平和な世になると、探索や門番、城下の見回りなどが主な任務となり、幕末までその職が存在していた。

 一方、読本や歌舞伎などで、虚構としての忍者が作られ、それは中国からもたらされた妖術の影響を受けて、消えたりガマに変身したりする忍者が生まれた。
 そして現在に至るまで、アニメやゲームなどでもさまざまな忍者が生まれ、そうした忍者はそれぞれの時代や国民性を反映していると言える。

忍者を地域に生かす、忍者に学ぶ

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モスクワでの忍者講座

 このように、忍者は日本発祥であって、18世紀以降はさまざまな娯楽に登場して人々を魅了してきた存在なのである。こうした忍者を地方に根づかせ、さらに発展させていくにはどのようにしたらいいだろうか。

 そのためには、単に見て面白いだけの忍者ではなく、しっかりとした根拠に基づく忍者を創り上げていく必要があると考える。各地方にはまだ埋もれている資料が少なくないだろう。そうした資料を発掘して、それぞれ個性ある忍者を作っていく必要があろう。そうでなければ表層のみの一過性の娯楽に終わってしまう。

 そして、「忍」の心は、まさに日本人の心をよく表している存在であることを認識し、忍術書に記されている忍びの知恵を現代社会に生かしていく方策を考えてはどうだろうか。
 自然とともに暮らし、そこからさまざまなことを感じ取った忍者から現代の私たちが学ぶことは少なくない。忍者は危機に直面したときにも動じることなく冷静に主体的に行動することができる人たちだった。
 そしてそこには長い期間をかけて培われてきた生きるための知恵が隠されているのである。

著者プロフィール

山田雄司

山田雄司三重大学人文学部教授

静岡県沼津市出身。京都大学卒、筑波大学大学院博士課程修了、博士(学術)。怨霊をはじめとした日本人の信仰に関する研究、忍者研究に携わる。

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