国民的映画『男はつらいよ』から考える温泉地のあり方とは

西村りえ温泉ライター

2014.12.16

心や体が疲れている人が訪れる温泉と観光振興

第13作『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』で寅さんが番頭さんとして働いた島根県温泉津温泉。舞台となった宿は「後楽」。俳優さんたちが泊まった部屋もそのまま
第13作『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』で寅さんが番頭さんとして働いた島根県温泉津温泉。舞台となった宿は「後楽」。俳優さんたちが泊まった部屋もそのまま

 温泉地は元々、体や心の疲れている人が行く場所。そうした人たちへの共感が温泉地の思想の根底にあるはずです。

 しかし、こうした目に見えにくく、ごく個人的な魅力を、どう観光振興につなげられるのか? 場合によっては逆ベクトルになるのではないか? との懸念もあります。

 それに対する答を私はまだ持ってはいません。ですが、一人の温泉好きとして、「そこへ行くと元気になる」「安らげる」という温泉地・宿と個人との、齟齬のないマッチングが叶うことを願ってやみません。

東京都式根島の地鉈温泉。第36作『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』にも登場する。渥美清さんにとって式根は特別な場所であったと思われる
東京都式根島の地鉈温泉。第36作『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』にも登場する。渥美清さんにとって式根は特別な場所であったと思われる

著者プロフィール

西村りえ

西村りえ温泉ライター

広島県江田島市出身。東京大学教育学部卒業。日本温泉地域学会理事、長野県温泉審議委員。「ねこ温泉 いぬ温泉」の会主宰。20数年間、フリーライターとして日本や世界の温泉地1000湯以上を訪問。雑誌・テレビ、ラジオなど各種媒体で温泉の魅力を伝えている。新たな温泉地の魅力づくりにも努めている。

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