国民的映画『男はつらいよ』から考える温泉地のあり方とは
温泉地にしかない魅力はどこにあるのか?
第21作『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』の舞台となった熊本県田の原温泉。舞台となった共同浴場の建物や宿が残る。のどかな農村の雰囲気は健在
長年、旅行雑誌などで温泉宿や温泉地の取材・執筆を続けてきました。その中で考え続けているのが、「温泉地とはどういう場所であるのか?」ということです。
今や有名観光地にも、都会の真ん中にも温泉が湧く時代になりました。日本三景である松島、天橋立、宮島でも、ここ15年間に温泉が開発されています。観光地が温泉地へと変わっていくにつれ、温泉地本来の役割が見えにくくなっているのです。
かつての日本の温泉地は、湯治場、すなわち、保養・療養・休養のために訪れる場所でした。そのためきらびやかなムードや食べきれないほどの食事は必要ありませんでした。
今、「温泉に行く」ことを考えると、多くの人は整った客室、大きくて眺めのいいお風呂、贅沢な料理を思い浮かべるのではないでしょうか。もちろんそれらは楽しい旅の思い出づくりに必要な要素ですが、温泉地でなくても揃うものでもあります。
では、温泉地にしかない魅力とは何なのか? それを探るため、私は、国民的映画『男はつらいよ』の中で温泉地がどう描かれているのかを調べてみることにしました。
ご存知、車寅次郞は、日本各地を旅しています。その中で温泉地にも数多く滞在しています。温泉地での滞在の仕方と、それ以外の場所(宿)での滞在の仕方の違いを明らかにすることで、温泉地のあり方や魅力があぶり出されるのではないかと考えたのです。
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