維新ふるさと館（鹿児島）展示　写真提供：九州観光推進機構

　また、「高千穂、椎葉山地域（宮崎県）」が世界農業遺産に、「祖母・傾・大崩（大分県、宮崎県）」もユネスコエコパークに指定されており、九州全体が「遺産」の宝庫になるという。

　もう1つのポイントが「明治維新150年」。

　2018年は明治維新から150年にあたり、全国で記念事業が予定されている。九州には明治維新に関わりの深い地域が多数あり、特に大きな貢献を果たした鹿児島県、佐賀県では企画が盛りだくさんだという。また、NHK大河ドラマ「西郷どん」も始まるため、観光要素が大きく膨らむという。

　ほかにもたくさんある。大分県の国東半島一体にある「六郷満山」が開山1300年を迎える。宇佐八幡神の化身といわれる仁聞菩薩が開基したと伝えられる寺院群で、神仏習合の山岳宗教といわれる。この開山1300年を記念して大規模なイベントが予定されている。

　2019年にはラグビーワールドカップがわが国で開催される。その48試合中10試合がこの九州地域内で開催される予定となっている。大会開催にあたり、キャンプ地づくりなど、事前に各国とのさまざまな交流が期待され、2018年にはその動きが活発になるものとみられている。

　そして、冬はたくさんの市街地でライトアップが行われている。一時、寒さをわすれて光の洪水の中を散策するのも、寒い季節ならではの楽しみといえよう。

佐賀の市街地で行われているライト・ファンタジー　写真提供：九州観光推進機構

復興エネルギーを伝える観光づくりが進む

　現在の熊本城を見ると、まだ崩壊したままのものも点在している。熊本城跡は国の特別史跡であり、その象徴といえる大小天守閣のほか、重要文化財に指定されている木造の櫓群や石垣などもある。

　現在の復旧状況はまだまだ端緒についたばかりであり、5年、10年先を見据えた取り組みと聞く。崩れた石垣や建造物のすぐ近くで、進みはじめた復旧工事を見るという貴重な体験もできる。

　城址の南側にある桜の馬場「城彩苑」では熊本の歴史と食文化を体験できるほか、江戸時代の町並みの雰囲気を味わえるお土産処「桜の小路」もある。おもてなし武将隊の演舞などもあって楽しく遊べる。また、隣接する熊本市役所14階の展望フロアからも、天守閣や本丸御殿、多くの石が崩れ、一本の石組みだけで支えられていた飯田丸五階櫓の修復工事などを遠望することができる（現在は修復工事のため足場や覆いなどがかかり、直接見ることはできない）。

　現在も、阿蘇周辺の道路の一部やJR豊肥本線と南阿蘇鉄道の一部はまだ復旧できていない。しかし、地域のみなさんが常に新しく正しい情報を発信してくれている。

　復旧工事など、1日も早い完成を目指す取り組みの中に、安全・安心が配慮され、むしろ人間の生きる営みの力強さを感じることができるだろう。復興のエネルギーを伝えることがなによりの観光になる、ということが身をもって体験できる旅がここにある。今も九州各地で復興観光のプログラムが多数行われている。

桜の馬場「城彩苑」には、物販・飲食などの「桜の小路」や歴史体験施設「湧々座」がある。奥に見えるのは未申櫓