「九州は一つ」を合言葉に 観光の力で震災復興を伝える 

継続性を育てる「ありがとうキャンペーン」

「九州は一つ」を合言葉に 観光の力で震災復興を伝える
「九州からありがとうキャンペーン」ロゴマーク 写真提供:九州観光推進機構

 「ふっこう割」は国の支援を受けた半年間限定のイベントである。資金投入もあり、大きな効果を上げた。しかし、その後の継続態勢づくりが重要だった。

 そこで考えたのが「心」の対応である。2017年4月からは165の自治体や観光協会、民間企業などの事業者と一体になり、「九州からありがとうキャンペーン」を展開している。統一ロゴとキャッチコピーを掲げ、「ふっこう割」で九州を元気づけていただいたことへの感謝の気持ちをこめてお迎えした。

 さまざまなツアーで、感謝をこめた小さなプレゼントやサービスを積み重ね、おもてなしの心を表したのである。

 キャンペーンのキャッチコピーは 「こんどは、九州があなたを元気にします!」  復興観光をぜひ楽しんでくださいという意味合いがこめられている。

地震体験を活かした震災復興ツーリズム

「九州は一つ」を合言葉に 観光の力で震災復興を伝える
JTBパンフレット「学びのプログラム 熊本」の表紙 写真提供:九州観光推進機構

 わが国は地震大国といわれるほど地震の多い国だ。古くから地震の経験を蓄積し、学びによって被害を小さくしてきた。このことは熊本地震でも積極的に取り組まれている。

 地震被害の中で大きかったものに、熊本城や阿蘇神社などの歴史的施設や、草千里などの自然景観への損害があった。

 熊本城はその城址全体が国の特別史跡であり、江戸期からの木造櫓や石積みの城壁など、重要文化財に指定された歴史的遺産等を多数持っている。そして、大きな天守閣は有数の観光スポットであった。これらが受けた被害は甚大だった。

 そこで考えられたのが復旧事業を間近で見学してもらい、関係者らの話を聞くことができる「震災復興ツーリズム」だ。ツアー企画にさまざまな防災プログラム学習などが組み込まれたもので、各地で展開されている。

 ある旅行会社では、「明日への防災・減災のために 伝える」と銘打って、6つのプログラムを作成している。

 内容の例を2つ挙げると、

① 「今だからこそ見て欲しい熊本城 被災の現状・復興への歩みを学ぶ!」 語り部ガイドによる案内をおりまぜた立ち入り規制区域外からの熊本城被災エリア見学などが組まれている。教育旅行にも適し、広く一般にも興味をひくもの。

② 「巨大地震に備える 熊本地震に学び、自社の事業継続計画を見直そう」 益城町内にある阿蘇熊本空港などで語り部ガイドや避難所施設の見学なども行っている。これは主に企業向けのプログラム。 というものだ。

 これらのプログラムでは現地の実情をその目で直接見て、地元の語り部の体験談を聞くことで、ほかでは得ることができない体験をするというものだ。ただ観光するだけでなく、プログラムごとに目的をもたせ、さまざまな立場の人が、今後の防災計画づくりに役立てられる内容なのである。これも地域の人たちと自治体、旅行会社などがまさに一体となって開発しているものだ。

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