「九州は一つ」を合言葉に 観光の力で震災復興を伝える 

「ふっこう割」の効果は大きかった

 震災後、復興に向けた行動はすみやかに始まった。やはり国が「ふっこう割」の支援を決めたことで大きな効果が出たという。

 九州観光推進機構の試算では、震災後に何も対策を講じなかった場合、宿泊キャンセルなどで2016年末までに約150万人泊分のマイナスの影響が生じると予測。しかし国の支援交付金を活用した「ふっこう割」の利用実績は2016年7~12月で約272万人泊に上った。実に予想の約1.8倍であり、経済効果は約600億円と推定された。

 「4月の地震発生後、九州一体となっていち早く取り組み、7月から九州全県を対象とする『ふっこう割』を開始できたことが大きかったと思います。12月には九州全県平均で前年の数字を越え、全国平均とほぼ同水準まで回復できました」と機構の緒方副本部長は言う。

風評被害から「九州は一つ」を再認識

 九州観光推進機構が行った震災後の旅行客数推移を調査する中で、地震被害を直接受けなかった県にも大きな影響が出ていることがわかった。それによると2016年4~5月はやはり全県で落ち込みが出ていた。九州全体でこの年の5月8日までに70万件を超える宿泊キャンセルが出たという。

 九州圏域外からの観光客が1地域だけを訪ねることは少なく、何か所かをあわせて巡ることが多い。そのため、思わぬところに影響が現れたのである。安全・安心などで漠然とした不安感が過剰な反応につながっていった。いわゆる風評被害というものだ。

 その対策のため、影響の大きかった教育旅行を中心に、各種セミナー、現地視察会、教育旅行担当者会議、合同修学旅行説明会・相談会などを連続して開催し、旅行事業者、学校の担当者、保護者などに向けて、多数のアピール活動を行っている。

 「この経験の中で観光は地域全体が関わることが改めて強く認識されたのです。九州観光は周遊することが大事。復興も観光も地域がばらばらに考えていてはいけない。『九州は一つ』協力し合おう、という思いがより強固になったのです」と緒方副本部長は言う。

 さまざまな取り組みの中で、正しい情報をしっかりと伝え、迂回路の利用で、以前どおりの観光が、安全・安心にできることを訴えた。

 重要なことは、こういった活動を個別に行うのではなく、九州という地域全体で取り組み、まとまって発信し、サポートしあう態勢、組織づくりが構築できていたこと。それが実績として現れてきた。

「九州は一つ」を合言葉に 観光の力で震災復興を伝える
ふっこうセミナー 写真提供:九州観光推進機構

「九州は一つ」を合言葉に 観光の力で震災復興を伝える道の駅「あそ望の郷くぎの(あそぼうのさとくぎの)」

「九州は一つ」を合言葉に 観光の力で震災復興を伝える
道の駅ではさまざまなイベントも開催される 写真提供:九州観光推進機構

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