農業、観光、ITの相乗で終わらない支援の仕組みを 岩沼みんなの家 by infocom

2017.10.19宮城県

東日本大震災から6年以上が経つ。震災直後は、東北から離れた場所からもさまざまな支援を行っていた人や団体も、今は終了している場合も多い。また企業による支援は、ものを購入して渡すことはあっても、その活用や管理は地元の人に任せていることもある。
そんな中、東京・渋谷に本社を置き、システム開発などを手掛けるインフォコム株式会社は、宮城県岩沼市で「岩沼みんなの家 by infocom」(以下「岩沼みんなの家」)を建設し、現在まで運営し続けている。そして、将来にわたる継続的な運営をめざして岩沼みんなの家を拠点とした事業を生み出そうとしている。

DSC_0159岩沼みんなの家 by infocom

 現在、東日本大震災の被災地域には15軒の「みんなの家」が建っている。震災後、建築家伊東豊雄さんを中心に、被災者の方々が集まることのできる場所として建てられたものだ。
 その一つが「岩沼みんなの家 by infocom」だ。名前にあるように、これはIT企業のインフォコム株式会社によって建てられ、運営されている。

地域の人とつくる「みんなの家」

 岩沼みんなの家は、宮城県岩沼市の住宅地の中にある。
 岩沼市は宮城県の南部、海岸側にある。漁港はなく、主産業は農業だ。海沿いの玉浦地区と、山側の岩沼地区からなる。
2011年の東日本大震災では震度6弱を観測し、大津波に見舞われた。浸水面積は市域の48%に及び、被災自治体の中で最大規模、死者180人、建物被害は2766棟に及ぶ。

 インフォコムは1983年に設立され、企業や医療公共機関をはじめとしたシステム開発やソフトウェアのパッケージ販売、また一般消費者向けの電子書籍やEコマースなどのシステムも提供している。
 同社みんなの家推進チーム課長、岩沼みんなの家支配人の堀拳駄さんは、以前から社会的課題を解決するビジネスを模索し、社業以外でも里山再生プロジェクトを行う「房総農芸塾」などに参加していた。震災直後もそのネットワークを利用し、会社として岩手県陸前高田市や大槌町での炊き出しなどを行っている。

 同社は設立30周年を控え、震災以前から社会貢献活動を始めたいと考えていた。2011年秋ごろから被災地への社会貢献活動をすると方針を固め、一般財団法人Take Action Foundationとともにその具体策を探った。最初は校庭の芝生化を検討したが、「遊んでいる土地があれば復興に使いたい」という被災地の方の意向があった。次に提案されたのが「みんなの家」の建設だった。
 堀さんは「房総農藝塾」で震災後の農業復興に関するヒントを求め、岩沼市の農業者から連絡をもらっていた。この縁から、農業を中心とした復興の拠点として「みんなの家」が岩沼市に建設されることになった。

 2013年7月、岩沼みんなの家が竣工した。建設地の決定から竣工に至るまで、地域の農業生産法人や、地元小学校のPTA会長などから大いに協力を得た。地域の人も設計前のワークショップや壁塗りの作業などに参加した。

 現在の岩沼みんなの家はいくつかの機能を持っている。毎日9時から15時までは、コーヒーやアイスクリームなどを提供する「カフェ」。土日祝日には地元産の野菜などの直売を行う「産直市」。これは震災以前、近くの「かあちゃん広場」で行われていた直売市をここで再開させたものだ。さらに、「地域の集会所」の顔も持ち、料理を出したり、バーベキューの会も行われる。子どもが遊びに来て、置いてあるiPadでゲームをするのも日常の姿である。

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岩沼みんなの家内部

岩沼産の採れたて野菜がずらりと並ぶ「みんなの直売!」
週末に開催される「みんなの直売!」

子どもたちも学校帰りに気楽に立ち寄ります
子どもたちも訪れる

 当初、地域のNPOとインフォコムでみんなの家を管理する予定だったが、さまざまな事情で、インフォコムが管理・運営を行うことになった。

:建てる際に何千万円か寄付して、あとは現地の人が管理するというのが民間企業の一般的な手法だと思います。しかしここでは、建てて、運営もしていくという考え方でやってきました。

 インフォコムからは社員が一人「管理人」として常駐し、堀さんは岩沼に部屋を借りて東京と往復している。さらに、現地でスタッフも雇用している。

 岩沼みんなの家ではさまざまなイベントも開催している。堀さんの印象に残っているのはハロウィンだ。初めて開催したのは2013年、そのころ全国的にはまだ盛んではなかったが、当日夕方、仮装したたくさんの子どもたちがやってきた。

:非常にうれしかったです。それまで玉浦地区では、ハロウィンとかクリスマスとか西洋のイベントはやっていなかったのですが、若い世代のお母さんたちが受け入れて、面白がってくれました。

まだハロウィーンがメジャーでなかった時期から岩沼では変装した子どもたちの笑い声が響いていました
ハロウィンイベント

人が集う「岩沼みんなの家」クリスマスイベント

 また、カフェで提供している米粉のホットドッグや薬膳クッキー、クロックムッシュに使うバンズなどは、堀さんのネットワークを使って料理研究家の意見を聞きながら、岩沼みんなの家オリジナルのものを開発した。これは地元の特産品を使った6次産業化への挑戦でもある。
 その後地域の人からの提案で開発したのが、持ち帰りや通信販売もできる「みんなのジェラート」だ。岩沼産の豆、米、野菜などを材料に使い、仙台市のジェラート店でつくってもらっている。テレビ番組でも紹介され、話題となった。

DSC_0168岩沼みんなの家で販売されている「みんなのジェラート」

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