観光客が食材を集めるツアー「島の朝ごはんプロジェクト」 生産者との触れ合いがおいしさを決める
土鍋やプレートにもこだわり、地元職人が製作したものを使用
取り組みを知ることがおいしさにつながる
ニンジンが苦手な子でも食べやすい「カラーステックニンジン」
「島の朝ごはんプロジェクト」のツアーはどういうふうに巡るのだろうか。
今年の5~6月に実施したツアー「初夏の朝ごはんプラン」を紹介する。1日目は13時に淡路市の北淡IC付近で集合。移動は自家用車で行い、ペンションスタッフの車に先導されながら、2~3カ所の生産者を巡る。
まずは、新規就農者など6つの農園で構成する団体「フレッシュグループ淡路島」の水野拓宇馬(みずの・たくま)さんが栽培している農園へと向かう。ここでは、牛糞堆肥や海藻肥料など島の資源を活用して、ルッコラ、ハーブなど多種類の西洋野菜を栽培している。香り、彩り、苦みがしっかりと感じられる野菜づくりが好評で、神戸、大阪、東京などのホテルや飲食店から注文を受けている。
水野さんはパープル、イエロー、オレンジ、ホワイトのカラースティックニンジンやイタリアンパセリなどを栽培している。ニンジンの味は色によって異なる。例えばパープルは独特なコクがあり、イエローは甘味が強く、オレンジは香りが強い。ニンジンが苦手な人でも食べやすいと好評だ。
東:子どもたちは目をキラキラさせながらニンジンを掘り、そのままかじってもらうと「おいしい」と喜んでいました。高齢のご夫婦が参加されたときは、4色のニンジンに驚いて、栽培方法をかなり詳しく聞いていましたね。
収穫後はニンジンを洗い、袋詰めなど出荷作業を手伝ってから次の場所へ移動する。
フレッシュグループから車で約10分走ると北坂養鶏場に到着する。
北坂養鶏場では、約15万羽の鶏舎を見学したり、直売所の向かいにある平飼い小屋では、「産みたてたまごの手採り体験」ができる。代表の北坂勝(きたさか・まさる)さんからは純国産鶏の「さくら」と「もみじ」の違いや、飼育環境のこと、鶏糞を天然発酵肥料に加工してリサイクルに取り組んでいることなどについて詳しく説明してもらう。
東:エサや飼育環境にこだわり、鶏糞の衛生管理を徹底しているので、においはほとんどないし、とても清潔だということに皆さん驚きます。
産みたてたまごの手採り体験
「もみじ」は黄味が濃厚で、卵かけごはんのような生食に向き。「さくら」は白身が強く、泡立ちがいいのでケーキなどのお菓子づくりに最適
藤本水産では「釜揚しらす」の干し場を見学
ペンションの農園で追加の野菜を収穫し「朝ごはん」のためのドレッシングを手づくりする。
そして播磨灘に沈む美しい夕日を眺めながら、淡路島産の食材を使ったコース料理をいただくという行程だ。
翌日は収穫した食材と東さんが自家農園から収穫した野菜をふんだんに使った朝ごはんを食べる。これこそがツアーのメインイベント。昨日の思い出とともにいただく朝食はさぞおいしいことだろう。
昨日の体験を思い出しながら朝食をいただく
メニュー表
東:お米から野菜まで、すべて淡路島産です。今ではズッキーニを栽培する農家さんもいるんですよ。どんな人がどうやってつくっているかを知れば、安心しておいしくいただくことができますよね。
初年度は季節ごとに生産者を変更して「春プラン」「秋プラン」を造成し、週末限定でツアーを開催した。赤ちゃん連れの若い夫婦から高齢の夫婦、女性グループなど約50組が参加し、口コミなどで広がっていった。そして、地元メディアや全国放送で紹介されるようになり、島の朝ごはんプロジェクトの認知度は少しずつ上がっていった。
さらにプロジェクトに加えてほしいという生産者が増えたほか、洲本市商工会が企画したツアー「淡路島への旅 からだとこころのヘルスツアー」のプログラムに「島の朝ごはん」ツアーが組み込まれるなど、活動が広がりを見せている。
しかし、観光農園のようにいつでも生産物がそろってはいないことや、生産者がツアーのために使う時間を確保することが難しく、開催数を思いのほか増やせないことが悩みという。
東:一般の宿泊客と食材の話になり、生産者さんの話をしていると、「島の朝ごはん」を今から体験したいと言ってくれるのですが、急な受け入れが難しいです。今後は、希望者がいつでも北坂養鶏場の平飼い小屋で産みたてたまごの手採り体験ができるなど、ちょっとした収穫体験ならできる体制を整えたいと考えています。
最後に淡路島のこれからの観光について東さんにうかがった。
東:これからは観光地を巡る旅だけでなく、私たちのツアーのように、淡路島で働く人(生産者)に触れることができる旅がもっと増えるといいですね。食や人を通じて淡路島のことを知ってもらい、農産物を購入してもらったり、あの人にまた会いたいと再び来てもらえる島になればいいなと思います。
東さんと富田さんは今も毎月2~3回のペースで会合を行い、今後のツアーについて検討を進めている。生産者と観光客をつなぐ取り組みはこれまでにない新しい旅として注目を集めている。どのようなツアーに進化していくのか、今後が楽しみである。
リンク:島の朝ごはんプロジェクト
(インタビュー・文/塩田恵理子)
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