観光客が食材を集めるツアー「島の朝ごはんプロジェクト」  生産者との触れ合いがおいしさを決める

2017.09.19兵庫県

観光客が食材を集めるツアー「島の朝ごはんプロジェクト」 生産者との触れ合いがおいしさを決める
時間をかけて淡路島を巡り朝ごはんの食材を集める

 朝ごはんを主役にしたさまざまな取り組みが全国で生まれる中、兵庫県の淡路島では観光客が生産者を訪ね、翌日の朝ごはんの食材を集めてくる1泊2日のツアー「島の朝ごはん」が行われている。

 淡路市でペンションやカフェを経営する東高志(あずま・たかし)さんと洲本市で企画会社を経営する富田祐介(とみた・ゆうすけ)さんが「島の朝ごはんプロジェクト」実行委員会を立ち上げ、島の農業グループや養鶏場、農家などと連携して、観光客に生産者の顔や現場の雰囲気を知ってもらうためのツアーを企画した。

 ツアーは季節に合わせて最適な訪問先を東さんがコーディネートする。観光客は淡路島に到着後ペンションにチェックインするまでの時間を使い、収穫体験や出荷の手伝いなどをしながら、生産者から翌日の朝ごはんの食材を受け取る。

 生産現場に触れ、生産者の思いや淡路島での暮らしぶりを知ることが、このツアーで最も大切なことである。翌日の朝ごはんでは、昨日の思い出を振り返りながら食べることで、ただ提供された朝ごはんよりもとてもおいしく感じられるのである。 このツアーは食育に関心が高い人たちから注目を集め、これまでに家族連れや高齢の夫婦など、幅広い世代が参加している。

 活動を始めた経緯や、その活動内容について、東さんに話しをうかがった。

観光客が食材を集めるツアー「島の朝ごはんプロジェクト」 生産者との触れ合いがおいしさを決める
左はチューリップハウス農園の黒田さん、中央は東さん

観光客が食材を集めるツアー「島の朝ごはんプロジェクト」 生産者との触れ合いがおいしさを決める
兵庫県神戸市と淡路市を結ぶ世界最長の吊り橋「明石海峡大橋」

生産者と淡路島を盛り上げたいという思いでツアーを企画

 淡路島は日本古来から平安時代まで、皇室、朝廷に海水産物を中心とした御食料を貢いだと言われ、若狭、志摩と並び、御食国(みけつくに)の一つとして知られている。
現在でも主な産業は農業、観光業、製造業で、農業では玉ねぎ、レタス、白菜、稲作のほか、花卉やトマトなどの施設園芸、淡路ビーフなどの畜産も盛んだ。

 東さんは食に恵まれたこの地へ神戸市から35年前に移住してきた。瀬戸内海を一望できる丘陵地にペンション「ターニングポイント」を開業し、ファミリー層をターゲットにした客室と地元の食材をふんだんに使った食事を提供している。
 安心で安全な食事を提供したいという思いから、食材は自家農園で栽培した野菜や淡路島の生産者から直接仕入れたものを使用している。
 開業から現在まで生産者と深く関わってきた東さんは、この10年で農業がいろいろと変わってきていると感じている。その変化について東さんはこう話す。

東:私がペンションを始めたころは、農業は主におじいちゃんやおばあちゃんが担い、儲からない、キツイなどと言われ、自給自足で行っていましたが、最近は移住してきた若い世代が農業に新規参入し、誰に対して農産物を売りたいのか、つまりマーケティングを意識した農業を行っています。島の生産者さんもそうした動きに引っ張られ、道の駅や直売所を積極的に活用して、生産物を島内外へ売り込むなど生産現場が活気づいているんです。

 そうした状況を目の当たりにした東さんは生産者と一緒に淡路島を盛り上げたいという気持ちが芽生え、ペンションに宿泊する観光客と生産者をつなぐきっかけづくりができないだろうかと考えて生まれたのが「島の朝ごはんプロジェクト」だった。

 ではなぜ夜ごはんではなく朝ごはんなのか。それは長年の取引先である北坂養鶏場が関係している。北坂養鶏場では日本で約6%しかいない純国産鶏の「さくら」と「もみじ」をヒヨコから育てている。エサは遺伝子組み換えでないコーンやぬかを、水はミネラルが豊富な地下水を使用している。飼育環境に配慮し、大切に育てられた鶏が産んだ卵を東さんは毎朝眺めているうちに、こう考えるようになった。

東:産みたての卵をアツアツのご飯にかけて食べたら、絶対おいしいはず。私がイメージする卵かけご飯は朝なので、そこから「島の朝ごはん」というフレーズが生まれ、生産者の食材を使って島の名物になる朝ごはんを開発したら面白いんじゃないかと。

観光客が食材を集めるツアー「島の朝ごはんプロジェクト」 生産者との触れ合いがおいしさを決める
北坂養鶏場の産みたての卵

 ところが、朝ごはんの取り組みはすでに全国で行われていたので、差別化していくにはどうすればいいのかを考えた。そこで、淡路島で「観光」「食」「研修」の企画提案を行っている株式会社シマトワークスの富田さんに声をかけ、最高の朝ごはんとは何かを1年かけて模索していった。

 東さんたちが悩んでいた2014年は、冷凍食品に農薬が混入されたり、産地を偽装した商品の販売が横行するなど、食に関する事件が相次ぎ、食の安全性について消費者の不安が高まっている時期だった。

 こうした背景から「島の朝ごはんプロジェクト」では、淡路島の食材を盛りだくさんにそろえた朝ごはんの提供ではなく、安心で安全なものを生産するために生産者はどんな工夫や配慮をしているのか、生産者との触れ合いを通じて、食の安心・安全を伝えることをツアーに織り込むようにした。

東:生産者さんから仕事のこと、地域のことなど話をたくさん聞いた上で、食材をいただく。それを使った朝ごはんは、前日の思い出と重なって最高の味になると思いました。

 こうして東さんたちは、農業グループや養鶏場、農家などと連携して、2015年から1泊2日のツアー「島の朝ごはんプロジェクト」をスタートさせた。

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有機農法をしている笹田農園で玉ねぎの収穫体験。玉ねぎの育て方から地域のこと、仕事観などについてまで話が弾む

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