人と人、地域をつなぎ新しい価値をつくりだすNPO法人地域情報化モデル研究会

米田剛NPO法人地域情報化モデル研究会 代表理事

2016.06.16青森県

オープンデータ化の推進を促すには

インターナショナルオープンデータディ青森会場での集合写真
インターナショナルオープンデータディ青森会場での集合写真

 米田さんはこのモデルを全国各地へ普及していくためには、公共団体に観光情報のオープンデータ化を促すことが不可欠だと考え、NPO地域情報化モデル研究会が発起人となり、富士通、JTB、ANA総合研究所や、総務省や観光庁をオブザーバーに加え、「観光情報連携プラットフォーム機構」(略称:ASIC)をこの5月に設立した。

 ASICは公共団体の保有する観光情報を民間開放し、公共団体間での広域連携活用や民間でのビジネス活用を推進する会員制の非営利活動団体である。

米田
「行政、自治体の担当者は、オープンデータの考え方に賛同しても、データを民間開放するためのデータ整備や更新作業は、本来の業務ではないため負担となってしまいます。これがオープンデータ化を阻む壁の一つとなっています」

 そこで米田さんは本業での技術力を活かし、観光情報サイトに公開されている観光情報を自動で収集する技術を開発した。すでに47都道府県の観光情報の収集は終わっているという。

 この技術があれば、自治体担当者にデータ登録の負担を解消し、観光サイト上に掲載されている最新の観光情報を活用できるようになる。これを社会全体で活用できるようにするための官民連携のスキームとして、米田さんはASICを設立した。
 データ提供者である公共団体は、観光情報の二次利用の許諾に同意を前提に入会(無料)することができ、広域観光圏など自治体間同士での最新の観光情報の相互利用が容易に行えるようになる。データの経済利用者である民間企業の場合は有料での会員登録となる。

 オープンデータは社会に新しい価値を生み出すが、誰でも利用できることが前提であるため、提供側である公共団体にとっては、その使途が気になるところである。オープンデータではその使途が確認しづらい。一方、ASICでは会員制としたことで、データ利用者の与信を事前確認するとともに、データの活用状況も追跡・確認できるメリットがある。

 さらに、有識者をASICアドバイザとして認定し、アドバイザによる助言やセミナー、会員間でのデータ活用コラボ事業の支援など、観光データの創造的活用に向けたさらに踏み込んだ推進体制まで持っていきたいと米田さんは考えている。
 また、青森県では2015年10月には米田さんが代表を務める「あおもり地域データ活用コンソーシアム」が立ち上がった。これは、観光情報など公共の情報のみならず、民間も含めた再利用性の高い地域のデータを円滑に相互利用できる社会環境を目指す推進団体で、全国でも例を見ない新たな取り組みとして注目されている。

 県内のIT企業や大学などの有識者5名をデータ活用アドバイザとして認定し、自社の顧客や地域の産業などに対してデータの開放や外部データの利活用を提案していくための活動を委嘱している。また、民間企業のデータ開放の貢献や、オープンデータの社会的な利活用、オープンデータの普及啓発活動に貢献した企業や団体を表彰するオープンデータ顕彰制度の創設にも取り組んでいる。

あおもり地域データ活用コンソーシアム表彰(オープンデータ顕彰)
あおもり地域データ活用コンソーシアム表彰(オープンデータ顕彰)

 地域愛を持ち、地域活性化を実現させるための専門力を持ち合わせた米田さんの取り組みが、人とのつながりによって、観光情報のオープンデータ活用モデルの実現につながった。次なる挑戦として、観光情報だけでなく地域のさまざまな情報を使って新しいイノベーションに取り組む米田さんの動向に今後も注目したい。

(インタビュー・文/塩田恵理子)

取材対象者プロフィール

米田剛

米田剛NPO法人地域情報化モデル研究会 代表理事

総務省地域情報化アドバイザー
総務省ICT地域マネージャー (2013年により青森県を担当)
特定非営利活動法人地域情報化モデル研究会 代表理事
観光情報連携プラットフォーム機構 常務理事
あおもり地域データ活用コンソーシアム 代表
(株)富士通システムズ・イースト プロジェクト部長

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