人と人、地域をつなぎ新しい価値をつくりだすNPO法人地域情報化モデル研究会

米田剛NPO法人地域情報化モデル研究会 代表理事

2016.06.16青森県

コラボが新しい活用法を生み出す

 米田さんは観光誘客を図るために3つの情報システムを構築した。

 1つ目は、太宰ファンと奥津軽をつなぐ観光情報サイト「太宰ミュージアム」だ。
 太宰治の小説や生涯についての紹介、少年期を過ごした生家「斜陽館」などの観光スポット情報に加え、奥津軽の祭りや食、津軽三味線、スノーシュートレッキングなどの体験イベントを一目で知ることができる情報をサイトに集約させた。

 2つ目は、携帯電話を活用した着地での情報提供サービスの構築である。
 移動中でも携帯電話から手軽に観光情報が取得できるよう、観光マップやチラシにQRコードをつけた。QRコードをカメラで読み込むと観光情報サイト「太宰ミュージアム」につながり、奥津軽の詳細な観光情報を提供できるようになった。

 3つ目は、車での移動を支援する「Myルートガイド」の構築
 旅行者が観光情報サイト「太宰ミュージアム」で行きたい観光スポットをいくつか選ぶと、車での最短ルートや走行時間、走行距離を自動計算し、地図上にそのルートを表示させる。注目すべきは、主要観光スポットだけでなく、地元ならではのおすすめ情報を立ち寄りスポットとして表示させ、埋もれた観光資源の発見を促すという点だ。
 これは、「Myルートガイド」に観光情報サイト「太宰ミュージアム」と情報サイト「ぷらなび」を融合することで実現した。

Myルートガイド
Myルートガイド

 地域のさまざまな観光情報サービスと連携する「Myルートガイド」は「便利だ」と利用者たちから高く評価された。青森県職員で、後にモデル研究会のメンバーとなる佐々木明夫さんも評価した一人だ。

 これまで県では、市町村や地域団体がバラバラに観光情報を発信し、利用者が横断的な情報を得ることが難しかった。また、観光マップは主要観光スポットの画像掲載が中心で、あまり機能的なものではなかった。佐々木さんはこうした課題を何とかしたいと考えていたときに「Myルートガイド」を知り、米田さんに県で活用したいと相談した。

 これを機会に米田さんと佐々木さんの二人三脚で、県や企業の協力を得ながら観光クラウドとして共同利用が可能なシステムへ改良が始まった。その結果、2012年、青森県内30の自治体の観光情報サイトのデータを二次使用可能なオープンデータとして「Myルートガイド」に融合させ、30の自治体の観光情報サイト上で、県内の周遊ルート案内サービスが利用できるようになった。

 その後、オープンデータ化された観光情報は県内19店舗のレンタカー会社でモバイル版の観光案内サービスとして活用されている。

地域をつなぐ観光クラウドモデル
地域をつなぐ観光クラウドモデル

 米田さんは「太宰ミュージアム」構想が県全体へと広がり、観光情報がオープンデータ化される展開はまったく予想していなかったという。

米田
「『Myルートガイド』のように人々から『いいよね』と言われるものを作り上げたことがポイントだと思います。一度注目されればコラボレーションしたい人が現われてきます。その人たちのリソースを結集すれば、さらに新しい活用法が生まれやすい状態となり、今回のような展開につながったのではないでしょうか」

「Myルートガイド」は、現在まで全国13県55団体へと普及が進んでいる。また、立ち上げには総務省や県などの補助金を活用したが、現在は民間事業者からのサービス利用料で運営するなど、自立可能なビジネスモデルが実現している。こうしたことが評価され、平成26年度総務省「地域情報化大賞」特別賞を受賞した。

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