井波彫刻の職人と交流できるゲストハウス「BED AND CRAFT」が誕生  ―ゲストハウスを起点に地域全体で観光活性化を目指すコラレアルチザンジャパン―

山川智嗣建築家

2017.05.22富山県

空き家対策と観光活性化を兼ねたゲストハウスがオープン

 ゲストハウス実現に向けては、南砺市で増えている空き家を活用したいと思い、山川さんは空き家の現状について詳しく調査した。ほとんどの空き家はすぐに壊さなければ危険というよりも、持ち主によってある程度管理されているものばかりだった。

 空き家とともに深刻なことがもう一つある。富山県の持ち家延べ床面積は、177.33平方メートルと全国で最も広い。つまり一軒あたりの家が大きいのである。しかし、若い世代が都市に流出してしまい、高齢者だけでは部屋の管理が大変という声を山川さんは聞いた。(出典:持ち家住宅述べ床面積

山川:家に住みながら半分は誰かに使ってもらうというスタイルを僕が実践してみようと思いました。今住んでいる家は2階建てで、僕と奥さん、猫1匹で暮らすには1階だけで十分です。そこで設計は僕が担当し、2階をゲストハウスに改修しませんかと地元の住宅メーカーのヤマヒデホームさんに提案しました。

 幸いにも南砺市は、起業や空き家対策に対しての補助金が充実している。山川さんが補助金を活用してゲストハウスを運営することで、地域の人にも、この取り組みにチャレンジしてもらえるような土壌をつくろうとした。その先に目指したのは空き家対策と観光活性化につなげるというプロジェクトだった。

 

井波彫刻の職人と交流できるゲストハウス「BED AND CRAFT」が誕生 
山川さんの自宅2階の改修費は約1000万円、市の制度を活用し400万円の補助金を受けた。山川さんは金・土・日に稼働すれば、3年半で支出分を回収できると試算

 そのプロジェクトを進めていくために、任意団体コラレアルチザンジャパンを立ち上げた。山川さんをはじめ、ヤマヒデホームや彫刻家、漆芸家、大工職人などの職人らがメンバーに加わった。

井波彫刻の職人と交流できるゲストハウス「BED AND CRAFT」が誕生  ―ゲストハウスを起点に地域全体で観光活性化を目指すコラレアルチザンジャパン―
コラレアルチザンジャパンのメンバー。左から彫刻家田中孝明さん、漆芸家田中早苗さん、仏師石原良定さん

 プロジェクトは膨らみ、3つの事業が動きはじめた。まず、元美術館を改修したゲストハウスKIRAKU-KANを2016年9月に完成させ、山川さんの自宅2階を改修したTATEGU-YA、小西さん宅の農業用の納屋を改修したMOMO-HOUSEを次々とオープンさせたのである。

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