グリーン・ツーリズムで楽しむ田舎の魅力
親子で一緒に作業する時間
訪問先において、昼間には、農作業の手伝いをしてみたり、缶蹴りなどの遊びに興じてみたり、そして夜には、庭先の芝生に寝転がって、満天の星々を仰ぎみるということも、仕事に追われ、ゆとりを失いがちな現代人には大切な時間になるのではないだろうか。特にお勧めなのが、親子での農村体験。筆者自身を省みると、親子で一緒に作業をすることが意外に多くないことに気づく。子どもたちが幼児の時には、一緒に遊園地に行ったり、時には東京ディズニーランドにも出かけることも。しかし、小学生くらいになれば、学校等にお任せしてしまい、直接的なコミュニケーション・ふれあいを持つ機会を失いがち。子どもは親の振る舞いにこそ興味を向けているのに。そこで、お母さんと楽しむ自然スケッチなど、何かの作業を一緒に行い、一緒に汗をかき、一緒に笑い、一緒に語らう時間が何よりも必要となる。
お母さんと一緒にスケッチ
このような必要に対応するものの一つとして、農村体験を挙げることができる。農家民宿に宿泊し、春には山菜採りや野菜の植え付け、夏には小川での魚とりや山歩き、秋には稲刈りやイモ掘りなどの農作業体験を、そして冬には雪遊びもできる。親子で一緒になって、石釜を使ったピザづくりやオジャミ(お手玉)遊び等にチャレンジできる。土の暖かさを手で触れて確認し、緑の香りを味わうこともできる。旬の農産物でつくられた料理を子どもたちと一緒に味わってみてはどうだろうか。季節ごとの楽しみにふれることのできる1泊2日の魔法の時間、農家のお母さんが、おばあちゃんが子どもを温かく見守り、必要に応じて体験指導をしてくれる。
なお、旅行事業者等がグリーン・ツーリズムに関与する場合、留意すべきポイントは、体験内容に柔軟性を持たせることである。当該旅行の魅力と趣旨を、すなわち受け入れ農家のお母さんやお父さんとの交流にこそ味わいがあることを利用者に丁寧に説明することが大切である。単なる特定体験の販売に矮小化することは適当でない。芋掘り体験も雨が降っては実現しない。利用者のお目当てが天候によって左右されたとしても、熟練の受け入れ農家は別の楽しみを用意しているものである。
田舎料理
小舟に乗って、ジュンサイ摘み体験
■著者プロフィール
農村生活総合研究センター主任研究員、秋田県立短期大学部教授を経て現職。専門分野は農村社会学、アグリビジネス起業論。著書に『農村変動と地域活性化』(単著)、『地域社会学へのまなざし』(共著)、『地域と響き合う農学教育の新展開』(共著)など。「秋田花まるっグリーン・ツーリズム大学」総括講師なども務める。
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