グリーン・ツーリズムで楽しむ田舎の魅力
身近な農村に触れる旅
稲刈り体験
農家民宿でだんらん
グリーン・ツーリズムという言葉をよく見かけるようになってきた。グリーンは「緑」、ツーリズムは「旅行行動」を指すことから、みどりあふれる、ありふれた農山漁村を楽しむアクティビティというのがその意味内容である。農作業体験や農村の暮らし体験等が中核となる。名所・旧跡、特別な景勝地を訪ねて歩く従来的な旅行とは色合いを変え、ふるさとのような身近な農村を訪ねて地元の人々と交流し、田舎暮らしの知恵に触れ、地元の食を味わう新しい旅の姿である。人間関係のストレスを脱し、世間の喧騒を逃れようとする現代人のニーズに対応する一つの旅行形態といえよう。
このグリーン・ツーリズムの動きが本格化するのは、1992年の農林水産省『新しい食料・農業・農村政策の方向』において、グリーン・ツーリズムが政策課題として取り上げられたことを契機としている。その後、都市と農村の交流展開のなかで、農村サイドの受け入れ体制の整備が進められた。農家民宿、農家レストラン、農産物直売活動、農業体験の提供施設などが全国各地にうまれ、多くの人々が農村での余暇を楽しむ機会が拡充してきている。
子どもへの教育的効果
近年では、子どもたちの成長・発達に関する問題意識と農業・農村体験を結びつける取組として、総務省・文部科学省・農林水産省の3省連携による「子ども農山漁村交流プロジェクト」が実施されてきた。秋田県における事業結果をみると、「学校での話を家庭内であまり語らなかったわが子が、今回の旅行から帰った瞬間に、堰を切ったようにさまざまな出来事を語るようになった」や「家族内でのコミュニケーションが高まった」という親の報告が多数みられ、また同行したある親から「農家での野菜パーティの席で、野菜嫌いであったはずのわが子が、採れたて野菜を頬張るのをみて、驚いた」との意見が聞かれ、さらには同行の先生からのアンケート結果では、「訪問先への事前学習と実際の訪問を経験して、事後のとりまとめ作業に積極的に関与するようになり、体験について話す姿がいきいきしているように感じる」というような教育的効果が指摘されている。
それぞれの地方自治体には、地域的なグリーン・ツーリズムの活動を支える協議会のようなものがおおむね組織されている。例えば、筆者の居住する秋田県をみれば、「NPO法人秋田花まるっグリーン・ツーリズム推進協議会」が組織化され、県内に点在する約40戸の農家民宿、約25軒の農村レストラン、19件の体験提供グループ等との間で連絡調整やインターネットによる情報発信、そして各種研修会(外国人訪問者への対応を含む)などを担っている。この組織にアクセスすることで、秋田の自然に抱かれて、農家のお母さんの手料理を味わい、笑顔の素敵なおばあちゃんやおじいちゃんと語らう時間を、都市の人々は獲得できる状況が生まれているのである。
野菜パーティ
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