「みなと」再興に向けて クルーズ/ベイ・ツーリズムでにぎわう交流拠点へ

福本賢太追手門学院大学社会学部社会学科教授

2015.07.16兵庫県

地域の交流拠点「みなと」活性化へ―ベイ・ツーリズムの調査と提案

1.神戸港の現況

集客する拠点(モザイク、神戸海洋博物館、神戸ポートタワー、神戸港震災メモリアルパーク、メリケンパーク、近隣には中華街、百貨店の大丸を核におしゃれな街並みなど)が神戸の「みなと」界隈に集積されている。かつて諸外国との交易が盛んであった名残を残す横浜港、長崎港と同様に、国際色豊かな「みなと」街を形成、クルーズ目的以外の集客に大きく貢献している。

メリケンパーク(神戸ポートタワー、神戸海洋博物館ほか)  (c) 一般財団法人神戸国際観光コンベンション協会
メリケンパーク(神戸ポートタワー、神戸海洋博物館ほか) (c) 一般財団法人神戸国際観光コンベンション協会

神戸港震災メモリアルパーク  (c) 一般財団法人神戸国際観光コンベンション協会
神戸港震災メモリアルパーク  (c) 一般財団法人神戸国際観光コンベンション協会

2.実地調査と提案

 ショート・クルーズ運行の拠点となる中突堤中央ターミナル(かもめりあ)界隈の実地調査を行った。

 JR、阪急・阪神、地下鉄など公共交通機関の最寄駅から徒歩15分圏内に位置し、また近隣には公共のバス停留所もある。自家用車・貸切バスなど私的交通機関の駐車場は、台数に限りはあるが隣接施設内に有していた。交流拠点「みなと」にふさわしい、利便性が良い立地にある。

 最大の課題は「人の回遊性が少ない」であった。JR神戸駅~モザイク間、JR元町駅~大丸・中華街周辺間には日々多くの来訪者があり集客力は高いが、モザイク~中突堤中央ターミナル界隈~大丸・中華街周辺間の交流拠点「みなと」地域への来訪者は少なく、集客力が低いことがわかった。高い集客力を持つ近隣との連携、核となる中突堤中央ターミナル発着クルーズ集客促進策との連動などを検討することが必要と考える。

 具体的な集客向上策の提案には、魅力発信に向けた「スタンプラリーの実施」「イベントの開催」「神戸独自の屋台、フリーマーケット、市の開催」「こども広場を運営」のほか、横浜港・門司港など「人の回遊性が多い」先行事例地から学ぶべきだとの意見があった。交流拠点「みなと」神戸の再興へ向けて、地域の民力と知恵を結集し創意工夫の取り組みを願っている。

フィールドワークを行った学生
フィールドワークを行った学生

 地域住民の交流や観光の振興を通じた地域の活性化に資する「みなと」を核としたまちづくりを促進するため、住民参加による地域振興の取り組みが継続的に行われる施設とした「みなとオアシス」動向に注目している。平成27年3月1日現在、登録数80カ所、仮登録数6カ所が動きはじめている。

 交流拠点「みなと」を核としたベイ・ツーリズムが、地域の独自性を高め再興への新たな歩みにつながることを期待している。

著者プロフィール

福本賢太

福本賢太追手門学院大学社会学部社会学科教授

JTB西日本、神戸夙川学院大学観光文化学部教授などを経て現職。専門分野は観光学、キャリア教育。日本観光研究学会理事、NPO法人観光力推進ネットワーク関西理事、全国高校生観光プランコンテスト大会審査委員などを務める。著書に『現代の観光事業』(共著)など。

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