日本遺産ブランド-文化財を活かした国際文化観光のベストモデルを目指して
日本遺産とは今までになくて、そしてこれから完成形を目指す文化観光の仕掛け
春の天寧寺三重塔(尾道市) 写真提供:広島県
ただしストーリーが重要であるからといって、観光が大事であるからといって、みせかけだけのテーマパークの広域版にだけにはなってほしくないと思っている。地域に残る本物である文化財をつないで、訪れる人に「さすがだね」と思って楽しんでもらえる仕掛け、すなわちプロデュースの能力が問われている。見るもの、そしてそこで聞くストーリーが本物であることが、日本遺産ブランドを今後も支えていく。
日本遺産とは、今までになくて、そしてこれからその完成形を目指す文化観光の仕掛けでもある。認定された時にパーフェクトであるものはない。どこにでもあるような説明板やパンフレットでストーリーを語ってほしくはないし、事細かな歴史の叙述の羅列だけに終わってほしくない。訪れる人が夢を共有できる仕掛けがほしい。
日本遺産には、地域の資源を有効に活用する持続可能な地域活性化・観光の国際的なベストモデルとなってほしいと思っている。
スポーツでいうなら、いわば強化選手である。これからどのように育っていくか楽しみであると同時に、具体的に何をすればいいかととまどう地元のために、参考となる強化プログラムのような仕組みが、観光庁とその関係機関との協力のもとに必要となるだろうと考えている。
筆者註:本稿は、日本遺産選定委員会委員長を務める筆者が、日本遺産の説明と広報を兼ねて各誌に発表している基本原稿をもとに、本ウェブサイトに向けて加筆推敲したものである。
■著者プロフィール
文化庁、国際機関ICCROM、独立行政法人東京文化財研究所文化遺産国際協力センターなどを経て2008年より筑波大学教授となる。2015年より日本遺産選定委員会委員長。専門は文化遺産論、建築史。文化審議会世界文化遺産・無形文化遺産部会委員。国際機関ICOMOS会員。
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