域学連携を持続可能にするポイントとは

山本早苗常葉大学社会環境学部准教授

2016.07.04静岡県

手持ちの札で勝負し、今あるものを生かし切る

復活した大地曳網祭りでは、学生も運営に関わる
復活した大地曳網祭りでは、学生も運営に関わる

 これまでプロジェクトに関わってきて、域学連携とは、ふわっとしたゴールイメージはあっても、どこに行き着くかわからないプロセスそのものを楽しむもので、絶えず軌道修正したり、新しい小さな挑戦を積み重ねたりしながら、問題を自分事として捉え直し、場を意味づけるということの繰り返しだったと感じます。

 つい先日、「水と文化研究会」事務局長の小坂育子さんから伺った言葉は、まさに域学連携のあり方を示唆するものだと大変印象に残りました。小坂さんは、聞き書きをする中で、「自分の人生いうのは、今ある手持ちの札で勝負するしかないんや」という語り手の言葉に触発されます。地域の人々は、どんなに条件が悪くても限られた状況の中で、どんな手札があるのかをしっかりと認識し、その手持ちの札をどうすれば生かし切ることができるのかと知恵を絞り出すことが、なによりも大事だと言います。今、置かれている状況の中で、その地域にあるものや人、地域で受け継がれてきた自然、歴史や文化を生かし切れるかどうか。ないものねだりをせずに、あるもの探しをするという吉本哲郎さんの地元学の考え方にも通じています。

 自分たちの手札を生かして勝負した上で、地域の問題を自分事として捉える学生たちとつながる場ができれば、学生たちが「第二の故郷」とまで思えるほどの関係を築くことができ、多様な価値観を持つ人たちが、ゆるやかにつながっていけるような場づくりや関係づくりへと展開していくことも可能になるのだろうと思います。これこそが、わたしが目指す域学連携の姿です。

 

著者プロフィール

山本早苗

山本早苗常葉大学社会環境学部准教授

京都府京都市出身。関西学院大学大学院社会学研究科博士課程後期課程修了、博士(社会学)。2008~2010年、北京師範大学文学院 高級研究員を経て現職。環境社会学会震災・原発事故問題特別委員会委員長、棚田学会理事。専門は環境社会学、研究テーマは「中国シルクロード域における水辺空間の再編」、「棚田地域における人と水とのかかわり」。

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