文化財における三次元データの活用 ―デジタルアンコール遺跡プロジェクト・バーチャル飛鳥京ツアーを事例に―

大石岳史東京大学生産技術研究所・次世代モビリティ研究センター准教授

2016.06.16

倒壊危機にある遺跡をデータ化

バイヨン寺院
距離画像によるバイヨン寺院のCG

アンコールワット
アンコールワット

 こうした技術を用いて取り組んでいるプロジェクトの一つが、「デジタルアンコール遺跡プロジェクト」である。カンボジアにあるバイヨン寺院やアンコールワットは、世界遺産アンコール遺跡を形成するヒンズー・仏教混交の寺院跡だが、今も倒壊の危機に瀕している。そのためこれまで10年以上の歳月をかけて、これらの寺院の三次元データ化を進めている。

 アンコール遺跡の寺院は大規模かつ複雑な構造物のため、従来の固定型センサーでは限界があり、新しい計測システムを開発する必要があった。その一つが、「気球型移動距離センサー」で、気球にセンサーを吊り下げた距離画像を取得するものだ。気球が揺れると得られる立体画像に歪みが生じるが、センサーの上に取り付けられたビデオカメラ映像や、地上据え置き型のセンサーによるデータと比較して歪みを補正する。上空からの計測では、現在はドローンによる計測も進んでいる。

気球型移動距離センサー9-%e5%9c%b0%e4%b8%8a%e3%83%87%e3%83%bc%e3%82%bf%e3%81%a8%e3%81%ae%e7%b5%b1%e5%90%88%e3%81%ab%e3%82%88%e3%82%8b%e6%ad%aa%e3%81%bf%e8%a3%9c%e6%ad%a3
「気球型移動距離センサー」による計測

 また、移動機構を用いた高精度・高密度の計測機械も自作している。以前は固定で1カ所ごとにスキャンしていたが、現在は遺跡をスイープするように撮って歪みを補正する方法になっている。今後はロボットによる自動化などもより進んでいくだろう。

10-%e7%a7%bb%e5%8b%95%e6%a9%9f%e6%a7%8b%e3%82%92%e7%94%a8%e3%81%84%e3%81%9f%e8%a8%88%e6%b8%ac%e6%a9%9f%e6%a2%b0
遺跡をスイープするように撮る計測機械

1 2 3 4

スポンサードリンク