文化財における三次元データの活用 ―デジタルアンコール遺跡プロジェクト・バーチャル飛鳥京ツアーを事例に―
倒壊危機にある遺跡をデータ化
距離画像によるバイヨン寺院のCG
アンコールワット
こうした技術を用いて取り組んでいるプロジェクトの一つが、「デジタルアンコール遺跡プロジェクト」である。カンボジアにあるバイヨン寺院やアンコールワットは、世界遺産アンコール遺跡を形成するヒンズー・仏教混交の寺院跡だが、今も倒壊の危機に瀕している。そのためこれまで10年以上の歳月をかけて、これらの寺院の三次元データ化を進めている。
アンコール遺跡の寺院は大規模かつ複雑な構造物のため、従来の固定型センサーでは限界があり、新しい計測システムを開発する必要があった。その一つが、「気球型移動距離センサー」で、気球にセンサーを吊り下げた距離画像を取得するものだ。気球が揺れると得られる立体画像に歪みが生じるが、センサーの上に取り付けられたビデオカメラ映像や、地上据え置き型のセンサーによるデータと比較して歪みを補正する。上空からの計測では、現在はドローンによる計測も進んでいる。
「気球型移動距離センサー」による計測
また、移動機構を用いた高精度・高密度の計測機械も自作している。以前は固定で1カ所ごとにスキャンしていたが、現在は遺跡をスイープするように撮って歪みを補正する方法になっている。今後はロボットによる自動化などもより進んでいくだろう。
遺跡をスイープするように撮る計測機械
スポンサードリンク