文化財における三次元データの活用 ―デジタルアンコール遺跡プロジェクト・バーチャル飛鳥京ツアーを事例に―

大石岳史東京大学生産技術研究所・次世代モビリティ研究センター准教授

2016.06.16

三次元データから新たな知見を得るサイバー考古学

 さまざまな技術を使って得られたバイヨン寺院のデジタルデータからは、興味深い事実も浮かび上がった。

 バイヨン寺院にはメディペントが多く存在しているが、そのほとんどは写真も撮ることができない狭い場所にある。そこで鏡を利用した距離画像センサーによって三次元データ化し、合成画像を作成した。この画像から、仏像が削り取られ、ヒンズー教のシバ神の象徴が彫り直されていることが分かり、バイヨン寺院が仏教寺院からヒンズー教寺院へと造り変えられたことを示唆する貴重な資料であるともされている。

隠されたペディメントの可視化(鏡センサー)ペディメントの三次元モデル

 このように三次元データから考古学などに新しい知見を与えるのがサイバー考古学である。

 奈良大仏の螺髪の数の検証も、三次元データを活用した解析の一つである。文献に書かれている996個よりも少ないのではないかと以前から言われていたが、実際に三次元データを用いて検証したところ半分の483個しかないことが分かった。

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