城あるところに忍者あり、地域の忍者を世界へ 日本忍者協議会
忍者のつながりを全国に広げる
愛知県「徳川家康と服部半蔵忍者隊」オーディション
日本忍者協議会には設立後、愛知県、長野市、三重県名張市、和歌山市が加わった。今年度からは国の地方創生交付金に加え、加盟自治体の負担金も収入の一部となっている。これに加え、有料の個人会員の募集も始める予定だ。
立石:
「忍者学校のようなものを考えています。知識を得たり、ゆかりの地のどこかで修行を積むようにして地域と連携したりして級が上がっていくようなイメージです」
三重県で行われる伊勢志摩サミットでも、どこかで忍者を登場させてほしいと働きかけたそうだ。それ以外にも今年の夏には日本科学未来館(東京都江東区)で朝日新聞社などが主催する「忍者展」が開かれる予定があり、日本忍者協議会でこれと連動したイベントの開催も考えているという。
さまざまな予定があるが、「忍者の活用に取り組む地域をうまく連携させたり、そうした地域を増やしたりするのが日本忍者協議会の最大の役割」と立石さんは話す。
立石さんは忍者を活用する利点として、施設などの大型設備投資がなくても、衣装をそろえるなどの低予算で始められることをまず挙げる。次に、手裏剣打ちなどの体験プログラムや、手裏剣や家紋入りグッズなど土産品を開発しやすいこと。さらに、全国各地で取り組まれているため、ゆかりの地をめぐるさまざまな観光ルートが開発でき、訪日外国人観光客の動きも活発になる。
立石:
「観光のコンテンツとしては汎用性が高いので、うまく活用してもらえれば、観光の目玉がなくて困っている自治体も入り込みやすいと思います」
そのためには、地域の人にも観光客にも受け入れられるような、その地域の忍者像をつくることも必要だが、「文化的なストーリーを考えたり、手裏剣や家紋のようなマークをつくったり、新しいイベントを立ち上げたりするお手伝いを、協議会で行っていきたいと思っています」と立石さんは話す。
立石:
「日本は北海道から沖縄まで気候や食べ物が全然違い、それぞれの良さは変えようがありません。それぞれの地域独自の忍者が全国に生まれ、つながっていければ日本が忍者ランドのようにもなります。忍者を通じてそういった広がりが地域に生まれてくれればうれしいと思うし、そういうお手伝いをしていきたいと思います」
こうした日本忍者協議会の活動を支えるのは、立石さんの強い思いだ。
立石:
「文化資産としてとても有効なものが日本で生かされていないのはもったいないし、それを生かすチャンスは今しかないと思っています。誰かが強いこだわりを持って前へ進めないと進んでいきません。自分が踏ん張っているところもあります」
忍者は記録に残っていなくても「全国にいた可能性がある」という立石さんの話に驚いた人も少なくないのではないだろうか。忍者という外国人に人気のコンテンツを自分の地域に取り入れることを考えたとき、架空のものではなく、地域に実際にいたかもしれないものとして、より根拠を持って提示することができるのだ。
しかしより説得力のある地域独自の忍者像をつくるには、もちろん日本忍者協議会のサポートも得られるが、歴史書を見直したり、ストーリーに無理がないか検証したりと、地域の歴史に関する専門知識が必要になる。
こうしたときに専門家の協力を得られる体制は重要だろう。自治体には博物館学芸員、文化財担当者ら、歴史を専門とする人もいる。こうした自治体所属の専門家に協力姿勢があると、地域独自の忍者像もつくりやすいだろう。観光担当者の考えを、歴史や考古学などの視点から、あるときは支え、あるときはブレーキをかけられる体制が望ましい。
またある程度専門的知識がある人を観光担当者につけることも有効だろう。専門家の言いなりではなく、自身で理解して発信できれば周りの人への説得力も増す。
外国人の忍者人気はこれからも続くだろう。それを地域の観光に結び付けるには、ファンタジーの側面と、地域の人も納得できるような地域の忍者像とを、いかに融合させるかがポイントとなりそうだ。
(取材・文/青木 遥)
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