また来たくなる、好きになる島づくり-姫路市家島地区を事例に-

醍醐孝典(株)studio-Lディレクター

2016.04.18兵庫県

「やぶれのり」を活用した特産品
「やぶれのり」を活用した特産品

 次に取り組んだのが島の特産品づくりであった。「探られる島」の運営に関わってきた島の主婦グループが、若者たちから刺激を受けることで、自分たちも何か取り組みを始めたいと立ち上がったのである。
 2008年に主婦たちはNPO(特定非営利活動法人いえしま)を立ち上げ、海産物を活用した特産品づくりを始める。グループには漁師や仲買人の家の主婦が多く、ヒレに傷があったり、サイズが小さいなど、これまで廃棄されていた規格外の海産物を適正価格で買い取り、主婦の知恵と技術で加工品へと展開していった。

 決して大きな利益を得ることが目的ではなく、特産品を通じて家島のことを知ってもらい、小さく得た利益は、島の福祉バスを走らせる原資に充てるなど、島の課題解決に貢献している。
 特産品づくりにおいては多くの注文があっても決して消費者本位に振り回されず、「生産者本位」で自分たちが作りたいときにできる範囲で作ることも特徴である。まさに「この島の魅力は何か」を少しずつ共有してきた成果であると考えられる。

外国人対象のモニターツアー
外国人対象のモニターツアー

 3つ目のステップとして、いよいよ生活体験・交流型の観光をマネジメントする人材の育成の段階に取り掛かることとなった。
 2009年にNPO法人いえしまが「家島観光コンシェルジュ」の育成講座を企画し、島の内外から11名の参加者が講座に参加した。座学や視察などとともに、家島地区の空き家をゲストハウスとして活用し、外国人向けのモニターツアーを運営する実践的なカリキュラムを学んだ。モニターツアーに参加した外国人にとって、日本の漁村の生活文化を体験することは非常にエキサイティングで、大きな好評を得ることとなった。

 近年、家島地区を訪れる外国人も少しずつ増えているが、このような地道な活動の情報がSNS等の発達によってキャッチされる時代にあることを実感する。

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