代替現実ゲーム「Ingress」で魅力的なまちづくり プレーヤーも、観光客も、地域住民も喜ぶためには

白井暁彦神奈川工科大学情報学部情報メディア学科准教授

ともにイベントを開催したくなるまちへ

ingress

 またIT施策だけでなく、「ゲームの外側のイベント開発」を積極的に行っていくことが「ゲームを使ったゲーミフィケーション」としては重要な要素でした。これはNiantic Labs.社も重点を置いている点ですが、ゲームの内側だけを見ていると、緑や青といった陣営にこだわりすぎ、時には争いなども起こるのですが、あえて陣営を交流させ、新規ユーザを引き込み、博物館の活動を通して社会に浸透させることに力点を置いています。具体的には、次のような「相模Ingress部心得」があります。

私達相模Ingress部は以下の「三ヶ条」を掲げて活動しています。

一つ  緑とか青とか勢力にこだわらない
同じフィールドで戦う人たち同士、みんななかよく楽しもう!

一つ  博物を知り相模の国を愛する
ポータルになっている物にも目を向けてみよう! 新しい発見があるかも。 地元の博物を知り、大切にしよう!

一つ  ゲームを楽しみ節度をわきまえる
大切なポータルを失ったりしても自分を見失っちゃダメだ! ゲームということを忘れないで楽しもう。

 このようなポリシーは真面目なエージェントからは馬鹿げた提案に見えたことでしょう。

 一方で同時期に、公式であるNiantic Labs.社も2014年12月からFirst Saturdayと称する初心者育成イベントを開始します。これは毎月第一土曜日に、両陣営のボランティアが集まり、初心者を育成するイベントを自主的に運営するものです。Niantic Labs.社は主催者に対して、公式グッズなどのノベルティを贈り、全世界同時に育成競争を行い、結果を共有します。

 相模Ingress部は2015年1月4日に「Ingress初詣」を企画し、JAXA相模原が産んだ感動的な小惑星探査機「はやぶさ」をテーマにした正月らしい交流イベントを実施しました。

JAXA銀河連邦である淵野辺を舞台にした交流イベント、 2回目にはボランティア運営者も多数現れた
JAXA銀河連邦である淵野辺を舞台にした交流イベント、 2回目にはボランティア運営者も多数現れた

 このような市民主体のアプローチは急速に成長し、2月7日「春よ来い!相模原Ingress豆まき!」では、既に相模Ingress部以外の近隣都市から集まった一般エージェントがボトムアップでイベントの開催・運営を申し出るような事態になりました。結果として、2月7日のFirst Saturdayイベントでは、相模原市は全世界で5位となり、その後も自主的なイベントは継続しています。

世界初の“Ingress呉服割引”を実現した「つるや呉服店」前で
世界初の“Ingress呉服割引”を実現した「つるや呉服店」前で

2015年2月7日「春よ来い!相模原Ingress豆まき!」の参加者
2015年2月7日「春よ来い!相模原Ingress豆まき!」の参加者

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