スポーツツーリズムに期待される観光振興

原田宗彦早稲田大学スポーツ科学学術院教授

2011.12.16

 昨年の2010年、観光庁に「スポーツツーリズム推進連絡会議」が設置され、1年間の集中的な討議のまとめとして、本年6月に「スポーツツーリズム推進基本方針」が策定された。これによってスポーツツーリズムは本格的な啓蒙期を迎えた。

 筆者が「ツーリズムサミット2005」(社団法人日本ツーリズム産業団体連合会主催)において「スポーツツーリズムの現状と課題」というシンポジウムの司会を行ったのが6年前であるが、その時の「スポーツツーリズム」のグーグル検索のヒット数はわずか211件であった。現在のヒット数は123万件、「スポーツ観光」になると8,430万件のヒット数と、その数は飛躍的に増大した。

 スポーツツーリズムとは「予定調和性」と「回帰性」というツーリズムの基本的特徴を持つ時間消費型レジャー であり、スポーツ参加やスポーツ観戦、応援、ボランティアなどを組み合わせた楽しい観光体験活動を実践する仕組みや考え方と定義することができる。

 そして、「レクリエーション」や「アウトドアスポーツ」など、幅広いスポーツ概念の適用や、他の活動との組み合わせ(例えばスポーツと温泉)によって、スポーツツーリズムの守備範囲は大きく広がる。

 観光庁がスポーツツーリズムの推進に力を注ぎ始めて以来、観光振興にもたらす社会的・経済的効果が広く知られるようになり、例えば、さいたま市はスポーツイベントの誘致を行う「さいたまスポーツコミッション(SSC)」を設置した他、静岡県御殿場市は文化スポーツ課にスポーツツーリズム専門官を置き、積極的なスポーツ観光の振興策を講じている。

 このような全国的な広がりを受けて、観光庁では、来年の4月を目途に、全国のスポーツツーリズム推進組織を統合する「スポーツツーリズム推進連携組織」(JSTA)の設置に向けた勉強会をスタートさせた。さらに、スポーツツーリズム推進基本方針に盛り込まれた、スポーツツーリズムの人材育成事業も動き始めている。

 筆者は同勉強会の代表発起人を務めているが、日本がモノづくりだけでなく、コトづくりという不得意分野を克服し、グローバルな視点からスポーツツーリズムを展開することは国益にかなったポストモダンな産業育成であると考えている。

著者プロフィール

原田宗彦

原田宗彦早稲田大学スポーツ科学学術院教授

ペンシルバニア州立大学体育・レクリエーション学部博士課程修了後、フルブライト上級研究員(テキサスA&M大学)、大阪体育大学大学院教授などを経て、2005年(平成17年)から現職。一般社団日本スポーツツーリズム推進機構会長、日本スポーツマネジメント学会会長、Jリーグ理事も務める。

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