能登半島の先で旅人の心を楽にする「小さい港のゲストハウス」(石川県珠洲市)
「さいはて」の魅力
珠洲市の中心部から車で20分ほどにある「小さい港のゲストハウス」
窓から見えるのは漁船が泊まる「小さい港」。珠洲市の長橋地区、日本海に面する外浦の集落に「小さい港のゲストハウス」がある。金沢から車で約2時間半、能登半島の先端にある珠洲市の中心部からさらに車で約20分。金沢の土木建設会社の保養施設だった2階建ての建物は頑丈なつくりで、冬の日本海の海鳴りや荒れる波風にもびくともしない。和室が5部屋あり、個人客なら広々と使え、団体客も泊まれる。珠洲に住む坂本信子さんと坂本市郎さんが、2012年にオープンした。
「小さい港のゲストハウス」を運営する坂本信子さんとたま
信子さんは2002年に市郎さんと結婚して珠洲にやってきた。市郎さんは珠洲出身で、珠洲焼の陶芸家だ。自宅では「珠洲織陶苑」として作品を販売している。
この自宅で信子さんは2005年から、古民家レストラン「典座(てんぞ)」を開き、完全予約制で昼食を提供している。それを続けながら、車で30分ほどの場所に「小さい港のゲストハウス」を開いた。長橋漁港では釣りもできる。2013年からはゲストハウスの1階とその隣の倉庫を使って、期間限定の「長橋食堂」も開いている。
ゲストハウスから見た長橋漁港
ゲストハウス1階と倉庫を使い「長橋食堂」もオープン
能登半島では輪島の朝市や和倉温泉などが有名だ。豊かな自然のもとで人々が農業や漁業などを営んできた土地で、「能登の里山里海」は世界農業遺産に認定されている。揚浜式製塩技術、秋のキリコ祭りなども伝わる。この春からは、輪島市を中心とした能登地方がNHK朝の連続テレビ小説『まれ』の舞台となる。
珠洲は、「軍艦島」とも呼ばれる見附島や禄剛埼灯台などが名所だ。2月28日に公開された映画『さいはてにて―やさしい香りと待ちながら―』の撮影も行われた。珠洲までは車で和倉温泉から約1時間20分、輪島からは約40分かかる。その先は海。ここに来るのは、わざわざ珠洲に来ようとした人だ。
禄剛埼灯台 ©石川県観光連盟
信子:「果てにいる、という満足感が味わえる場所。自分はここにいる、と思える土地の力があるんじゃないかと思います」
市郎:「田舎で自然のきれいなところ、食べ物のおいしいところは全国にたくさんあります。その中でも能登に来るというのは、人を呼び寄せる独特の魅力があるからなのではと思います」
能登や珠洲の魅力を信子さんと市郎さんに尋ねると、少し迷いながらそう答えてくれた。
信子:「私たちも不思議なんです。珠洲の魅力ってよくわからない。お客さんに、どうして来たの、明日何するのって聞くのはそのせいでもあると思います」
明るくてパワフルな信子さんと、穏やかに話を続ける市郎さん。二人はこの場所で、楽しそうに客を迎えている。
見附島 ©石川県観光連盟
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