連載「地域ブランドの作り方」成功のための12のハードル ~その2.ブランディング、なぜ必要?「目的の共有とブランド定義づくり」のハードル~

福井隆東京農工大学大学院客員教授・地域生存支援有限責任事業組合代表・NPO法人エコツーリズムセンター理事

2018.06.05

「地域資源ブランド」と「観光地・商業地ブランド」

 ところで、みなさまはブランド化を進める上で、「何のために行う」のかを明確に決めて事業を行っていますか? 実際には、「地域活性化のため」「特産品を開発して地域経済効果を上げる」「事業者の収入を上げるため6次産業化を進める」「JAやJFの存続のため付加価値のある商品を開発し経済効果を狙う」、場合によっては「上司から補助金が付いたから進めろと言われた」など、いろいろあるのではないでしょうか。このように目的が異なれば、進め方も変わってきますね。先述のブランド定義だって、自分たちの売り上げのためだけのブランド化と地域の活性化のためでは異なってくることは自明です。そして、なんのためにブランド化を進めるのか、という問題も地域の合意形成に関わってきます。

福井隆 地域ブランド
【図3】地域ブランド構築の基本構図 
青木幸弘「地域ブランドを地域活性化の切り札に」『 ていくおふ』2008年秋号(No.124)掲載の図に、一部筆者が加筆

 それでは、地域ブランディングの成功とは、どんなことでしょうか。【図3】を見てください。ここでは、地域ブランドを2つに分けて説明しています。1つは、地域にさまざまある資源そのものがブランドになる姿、すなわち地域資源ブランド。鶴岡JAが進めた「だだちゃ豆」のブランド化などが、これに当たります。また、観光地・商業地ブランドでは「東京ディズニーランド」や「旭川動物園」などがそうでしょう。2つ目は、地域そのものがブランドになる姿です。日本の中で、このようなブランドとして捉えられる地域の代表は「京都」でしょうか。ご存知のように、京都は日本有数の観光地であり、「古都京都」として食べ物文化や伝統工芸品などが高く評価されています。実際に、特許庁の認定する地域団体商標として「京」の字が入っている認定商標が50にも上ります。京都の名前が付いていれば、間違いがないとして人々から信頼を得ている姿が浮かび上がります。

 外国に目を移すとフランスのパリやプロヴァンスなどが、地域そのものがブランドとなった好事例でしょう。この数十年で欧米のセレブを中心に人気の出たプロヴァンスは、英国人ピーターメールの「南仏プロヴァンスの12か月」という著作がきっかけとなり火が付きました。「ラベンダーなどの香り文化、そして明るく豊かな南仏」が評価され、多くの人たちがバカンスで訪れています。しかし、右の写真にあるようにプロヴァンスの大地は、農作物には厳しい石ころだらけの土地でした。この地の先人たちは、この土でも栽培可能なラベンダーなどのハーブで産業を創り上げてきました。

福井隆 地域ブランド
プロヴァンスでは、厳しい大地にハーブの花を咲かせ産業をつくった 撮影:筆者

この地域の代表的な企業に「ロクシタン」があります、日本でも数十店舗を展開する化粧品などの人気ブランドショップです。このような土地の弱みを、遺伝子レベルで優位性として高め、ブランドとして人気を博しているのがプロヴァンス地域なのです。このように、京都やプロヴァンスのように地域そのものがブランドになれば、そこを活かし物販や集客につなげることができるでしょう。地域ブランディングの目的として、最終的にはこのようなカタチになることを目指すことが必要ではないでしょうか。

ブランド化の目的を明確に

いかがでしょうか、みなさんはどちらを目的にブランディングに取り組まれているのでしょうか? もちろん、【図3】にあるように、両者は「地域資源ブランドによる地域全体のブランド化」と「地域ブランドによる地域資源ブランドの底上げ」という補完関係にあります。加えて、「地域性(地域に依拠する優位性)を生かした地域資源のブランド化」ということが基軸になって初めて真に信頼される地域資源ブランドになることができるのです。なぜブランディングを進めるのか、プロヴァンスのように地域そのものが人気ブランドとなり、多くの人が訪れ、地域産品もブランド商品として有名になり経済効果をもたらしてくれるようになれば良いですね。地域に依拠する信頼に値する優位性を見つけ、ブランド定義を決め、関係者が同じ方向を向きプロヴァンスのようなブランド地域を目指していただきたいと思います。そのためには、何のためにブランド化を目指すのかについて、地域関係者と共有することから始めるのが良いでしょう。

著者プロフィール

福井隆

福井隆東京農工大学大学院客員教授・地域生存支援有限責任事業組合代表・NPO法人エコツーリズムセンター理事

「地域で生きる希望をつくる」―地域の文化風土を活かした、持続可能な経営支援―

地域支援・事業化支援アドバイザー・地域ブランドファシリテーター
・地域ブランディング戦略作成支援
・観光地域づくり支援
・ステークスホルダーの合意形成支援

「地域で生きる希望をつくる」をモットーに、持続可能な地域をつくるための支援活動を行っている。地域の内発的な計画づくりの支援、地域資源を活かした魅力的な事業計画づくり、観光地域づくり支援、地域の人材育成支援など。
E-MAIL:kinari104@gmail.com

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