「食」と「ものづくり」が地域の個性を高める

江澤香織フード・クラフト・トラベルライター

 陶磁器王国・佐賀でも、斬新な取り組みが楽しめる

 
 佐賀県は有田焼、唐津焼など有名窯元も多い陶磁器王国ですが、2016年に有田焼創業400年事業のイベントの一つとして「USEUM ARITA(ユージアム アリタ)」が開催されました。佐賀を代表する人間国宝(重要無形文化財保持者)ら5氏の器を使い、地元食材で料理を楽しめるという期間限定レストランです。体験型美術館として、普段なかなか手にすることのできない貴重な器を使って食事ができると人気を博し、連日満席に。予約が殺到したため、当初の予定より期間を延長し、111日間に延べ約1万5,000人が来店しました。
 
 佐賀県立九州陶磁文化館の敷地内にガラスの温室のような特別スペースを作り、食事の前後にはすぐ隣りにあるミュージアムで見識を深めることもできます。また、フリーのギャラリースペースを設け、伝統的な技法を施したものから最新デザインまでさまざまな窯元の作品を展示し、専門のスタッフが解説を行うなど、有田焼の総合案内所的な機能を持たせていました。2015年に行われたミラノ万博や、パリの国際見本市メゾン・エ・オブジェへの出展作品なども陳列され、海外へ視野を向けた有田焼の最新プロジェクトを、臨場感を持って展示。
 
 この場所で現物を買うことはできなかったのですが、窯元めぐりをしたい人へのハブとしての役割もあったようです。実際に現地へ足を運んで、有田焼ともう一歩深いつながりを持って欲しい、という主催者の思いを反映してとのことでした。ちなみにUSEUM ARITAはあまりに人気が高かったため、2018年も幕末維新博に合わせ、今度は佐賀市内の「さがレトロ館」で3月17日より再び開催されました。
 
USEUM ARITA ユージアムアリタ
名作でご飯を食べる「USEUM ARITA」が開催された佐賀県立九州陶芸文化館
 
USEUM ARITA ユージアムアリタ
USEUM ARITA」の特設会場
 
USEUM ARITA ユージアムアリタ
地元食材を使った美味しいご馳走が有田焼の名品に盛り付けられる
 

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