親子2世代で取り組む酒造と食の民宿経営—地域から「地域の仕事」を変える—

父・淳志さんの思いと行動 

高千穂ムラたび
高千穂の中心地から、奥に入ったところにある秋元地区

 淳志さんは若いころからこの地域をなんとかしたいという思いが強かった。町役場に入ったのも、まちづくりのための知識を実践的に学べるからだったという。どぶろく特区を取得するためには、農業者認定を取得し自分で育てた米を持っていること、つくった酒を提供する飲食店か宿泊施設を持っていること、という2つの条件が必要だった。若いころからずっとそういうことを考えて生きてきた人だという。

絵里子:父は今も地域のためにと、たくさんの会合や勉強会に参加し、リーダー的な役割もいといません。私も高校生のころから集まりに連れられて行き、そういう父を見て育ちました。父が役場を退職して新しい仕事についた契機の一つは、私が学校を卒業してこちらに戻ったことがあったようです。これで子育ても終り、社会でやるべき一つの区切りがついたと言っていました。

 絵里子さんはこの町で今の夫と知り合っている。夫となった勝彦さんも、結婚前からこの仕事を手伝うようになり、いつの間にか面白くなっていった。

 2011年にどぶろく事業を開始することになったとき、酒造部門はこの若い2人に任された。

絵里子:父はいつも地域のことを考えているので、会社では経営者であり、その他は地域のための活動が中心です。民宿や酒造の現場では母が民宿を切り盛りし、私たち夫婦が酒造部門を運営するようになりました。
 経営者である父と私たちの意見が異なることもありますが、酒造に関しては私たちが今の現実を一番よく知っているので、主張するところはきちんと通したいと思っています。

 淳志さんの思いを込めて「まろうど酒造」がはじめて造ったのが「御神水源どぶろく 千穂まいり」で、やさしい甘さととろりとした口当たりが特徴という。米作りから一貫しての手づくりである。

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