島の課題を解決する情報発信とは。しーまブログ深田小次郎さん
文化を守りながら島が発展するのを助ける
しーまブログでは奄美市から、「フリーランスが最も働きやすい島化計画」に関する業務委託を受けている。
奄美市では2020年までに200名のフリーランスを育成すること、50名以上のフリーランスの移住者を呼び込むことを目標に、2015年から取り組みを開始した。クラウドソーシングのランサーズ株式会社や、オンラインのハンドメイドマーケット「minne」を運営するGMOペパボ株式会社と連携協定を結んでいる。
しーまブログでは、企業などから記事作成の仕事を受けると、島のライターに分けて依頼し、書かれた記事を校正し、必要があればライターに修正してもらい、納品する。また、ランサーズやminneから講師を招いた研修などの運営、フリーランスのコミュニティづくりも担っている。島のライターを育成しているのだ。
編集や校正のできるスタッフがいること、ブログやフリーペーパーなどを通じて、ライターの多くを占める女性の支持を得ていることなどが、こうした役割でのしーまブログの存在感につながっている。
深田:どうしたら島にお金が落ちるかということを考えて、いろいろな方たちと話をして始めました。昔、大島紬が島の基幹産業だったときは、女性が家で子どもの面倒を見ながら機織りをして、一家を支えるくらい収入を得ました。しかしそれがなくなり、子どもを預けて働きに出るしかなくなっています。パソコンが機織りの代わりになるのはいいことだと思いました。
この取り組みは奄美が全国に先駆けて行っているので、ランサーズやminne、市としても、お互いに挑戦して軌道修正しています。はじめからだめだという思考では何もできません。
ライターの中には、かなり多くの仕事をする人もいれば、自分の都合に合わせて仕事をしたい人もいる。試行錯誤は続くが、奄美でのやり方が他の自治体にも広がるなど、新しい仕組みが少しずつ機能し定着しはじめているようだ。
これらに限らず、しーまブログの事業はどれも、未来に向けて島の発展を見据えたものばかりだ。
深田:島の問題を解決することで、結果として島がよくなればいいと思います。それも、今の島の文化を守りながら発展していくのがいいと思います。お客さんが来るように考えて島の文化が崩れていくよりは、今の文化を大切にしながらさらに発展していくような活性化がいい。
LCCが飛ぶようになってから、学生など滞在中の費用を節約する観光客も増えました。でも、観光客にも思い出をつくりたい人、島にお金を落としていきたい人もいると思うので、いいものがありますよと紹介したいのです。地域の負担にならないような観光、そしてお金が落ちる仕組みをつくっていけるといいと思います。
これからやりたいことはたくさんあるという深田さん。その一つが地域の事業継承の仕組みづくりだ。島の高齢者の中には、今営んでいる事業をやめたいという人も出てきている。「ジョブセンバ」を見ている島の経営者から「この事業売りますという募集があればぜひ見たい」と言われることもある。
深田:ニーズがあるのかなと思っています。また、一度東京に出た島の人が戻ってきて、企業に勤めるのもいいですが、起業するのも一つの道だと思います。アイデアややる気のある人と、いい仕事をマッチングさせるようなこともやってみたいと思います。
大浜海浜公園
しーまブログの情報発信は、課題解決を考えた情報発信だ。だから地域の力になる。
島外から訪れる観光客の困りごとを解決し、島の人特有の悩みを共有して解決手段を示している。そしてブログを開設する多くの住民とともに情報発信することで、島の人の商売を助け、島の人を暮らしやすくし、島外の人に届く奄美大島の情報を増やしている。「島の情報量と島の発展は比例する」という仮説は、こうした狙いやコンセプトのもとにやっているからこそ成り立っているのではないだろうか。フリーランス育成などでも島のことを考え、全体の採算も考えている。
全国には地域の情報を発信する紙媒体も、ウェブサイトも近年増えている。それを本当に地域の力になる情報発信にするためには、課題解決を考えて企画すること、そして自分たちですべてできると思わず、地域の人の力を借りて発信できる関係と仕組みをつくることが大切なのではないだろうか。
リンク:しーまブログ
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