島の課題を解決する情報発信とは。しーまブログ深田小次郎さん

2018.02.26鹿児島県

質の高い、ニーズに即したフリーペーパー

 しーまブログではフリーペーパーも出している。その一つ、「みしょらんガイド」は奄美群島の飲食店を紹介するもので、「日本フリーペーパー・タウン誌大賞2017」でグルメ部門優秀賞を受賞した。
 島外に住む島ファンの人から「今度どこに食べに行けばいいか」と聞かれ、島ファンの人でさえそう思うのであれば情報をまとめたほうがいい、と作り始めた。そのため島外の人を意識しているが、奄美空港のほか、スーパーや飲食店、専門店などさまざまな場所に設置してあり、島内の人も見ている。

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奄美空港に置かれた「みしょらんガイド」

 ビジュアルにはこだわりがある。最新号の表紙は、大河ドラマ「西郷どん」にちなんだ、奄美大島にも滞在していた西郷隆盛と、その島妻である愛加那、そしてクロウサギと伝説の妖怪ケンムンなどが登場し、小屋などのセットを組んで撮影した。撮影地の集落の方にも参加してもらった。
 これまでも、島の野菜を貼りつけた船のセットを組んで撮影したり、唄者(島唄の歌い手)に島の野菜でつくった三味線を持ってもらったりと、手の込んだ仕掛けをしている。これは他のフリーペーパーでも同様だ。

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左から「みしょらんガイド」「amammy」「ジョブセンバ」

 広告も既存のものを使うのではなく、この冊子用に自社で制作している。例えば酒蔵の広告では、酒蔵のスタッフに西郷隆盛に扮してもらった。

深田:地元の人が俳優みたいなことをしていると、話題になります。

 このデザイン、ビジュアルができるまでには、アートディレクターの重尚樹さんと編集部がじっくりと話し合いを重ねている。

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しーまブログスタッフの皆さん。深田さん以外は全員女性

深田:見栄えがいいもの、スタイリッシュなデザインは都会にもあります。東京から来る本を見本にしていると、気付かないうちに同じような企画を立てたりしがちです。でもそれは追わないで、地元にあるものを引っ張り上げてデザインしていく、地元にあるつながりからつくっていくのをコンセプトにしています。おしゃれになりすぎず、だからといってださくないように。

 掲載店には掲載料をもらっているが、募集はせず、こちらから声をかけていく。つまり、広告収入を得ながらも、載っているのは編集部が選んだ店ばかりで、読者は単なるクーポン付き冊子ではなく、おいしい店のガイドブックとして使うことができる。

 こうしてできた冊子は大きな反響を得ている。

深田:補助金が出ているわけではないので、全て自分たちで営業して採算を合わせています。収益性も考えて、バランスよくやっていくのはとても難しいです。

 他に、女性向けの冊子「amammy」を発行している。
 最新の特集は、奄美の祝い事についてだ。例えば島では子どもの小学校入学祝いを、客を招いて盛大に行う習慣がある。冊子では読者にアンケートを行い、そのさまざまなやり方を写真入りで紹介した。家に招くと時間に制限がなくなるが、集会所を使えば夜10時までに終われるので楽だという話や、料理の盛り皿をつくってくれる店なども紹介している。
 奄美特有の、しかも切実でニーズの高いことに応えているのだ。

深田:島はお祝い文化が盛んですが、大変だと思っていても口に出せない女性や、お祝いは嫌いだという人もいます。そこで、何がいちばん大変かを聞いて、ソリューションを提供する。みんなそう思っているんだねと、安心感を持ってもらえることを目指して企画しました。
 島の文化を残すのは大事ですが、ただ残すだけでは無理が生じてくる部分もあると思います。無理に残しても、結局みんなが疲弊してしまうので、現代風に少しずつ変化させながらでも残していく方が現実的です。これほど大変ならやらないという人もいるかもしれませんが、簡単な方法でも開けると提示することで、おもてなしの文化として残していくのも大事だと思います。

 「amammy」では年1回、「amammy女子会」という大規模なイベントも行っている。ハンドメイド雑貨の小売りやマッサージ、エステ、子どもの大工体験などのブースを設け、約3000人が来場した。またこれ以外に、不定期に開催する料理教室も定員オーバーとなるほどの人気だ。

深田:女性が主役という切り口は斬新だったのではないかと思います。amammy女子会で知り合った人が自分たちでイベントを企画するようにもなりました。

 他にも、島の求人紹介冊子「ジョブセンバ」を発行している。島には求人媒体がなく、島外の人から「島に来るなと言っているのと一緒じゃないか」と言われたことが制作のきっかけとなった。昨年12月には、東京での求人イベント「ジョブセンバ!! in 東京」も開催した。

深田:私たちはソリューションを提供しているのです。島の問題を解決して、結果として島がよくなればいいと思います。

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