島の課題を解決する情報発信とは。しーまブログ深田小次郎さん

2018.02.26鹿児島県

鹿児島県の奄美大島は2014年に成田空港、2016年に関西国際空港との間にLCCが就航し、より気軽に旅行できるようになった。また、今年のNHK大河ドラマ「西郷どん」でも舞台の一つとなるなど、話題性が高まっている。奄美群島には、奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の8つの有人島があり、距離的には沖縄に近いが、独特の文化を持っている。しかし(一社)あまみ大島観光物産連盟の調査では、沖縄県などと比べて奄美大島のイメージをはっきりと持っている島外の人は少ないことが明らかになっている。
「しーま」代表の深田小次郎さんは2010年2月に「島の情報量と島の発展は比例する」という仮説を立て、奄美群島に特化したブログサービス「しーまブログ」をスタートさせた。ビジュアルなどにこだわったフリーペーパーも発行しており、地元の人にも観光客にも人気だ。その情報発信、そしてさらに広がる活動は、地域に寄り添い、地域の力となっている。

ブログが島の経済を動かす

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「奄美群島情報サイト しーまブログ」トップページ

 「奄美群島情報サイト しーまブログ」のウェブサイトから登録すると、誰でも無料でブログを開設することができる。ブログを更新すると、このウェブサイトに更新情報やブログランキングなどが掲載されるため、奄美群島に興味のある人に届きやすい。2010年にスタートし、現在では延べ約5000のブログが開設されている。

 深田さんが、東京で音楽活動をしていた2000年代、島の情報がなかなか東京には伝わってこないと感じていた。もちろん東京では島の新聞は届かず、島から送られる荷物の包装用の新聞を楽しみに読んでいたそうだ。

深田:その時、情報を欲しているのに届かない、でもインターネットなら届けられるんじゃないかと考えました。

 一人で情報発信をするには限界があると思った深田さんは、島の人にブログを書いてもらおうと考えた。

深田:奄美はよく沖縄と比べられますが、違いは「メディア露出」の量の差なのではないかと思いました。知られていないから、奄美が選択肢に上がってこないのです。それで過疎化が進み、若い人も島に誇りが持てなくなってしまいます。
 島の発展に向けて、イベントなどいろいろやり方はありますが、情報に特化して、どんな角度でもいいから発信する活動をしてはどうかと考えました。

 そこで兄としーまブログを立ち上げ、初期に繰り返し行ったのが無料のブログ説明会だ。奄美群島を回り、公民館などで開催した。当時、ブログを開設していたのは全国でもITに詳しい一部の人だけ。「変な人が来た」と言われたり、誰も来なかったりしたこともあった。
 説明会では文章の書き方、写真の撮り方、やってはいけないこと、全国の成功事例などを伝え、実際にブログを開設するところまでやってもらった。その後も質問が出れば家まで教えに行った。

 深田さんはIT関係の仕事の経験はないが、東京にいたころからさまざまなウェブサイトを見るのが趣味で「今でも好きです。かなり見る人間です」という。
 その積み重ねがブログの説明だけではなく、しーまブログ全体をプロデュースし、人気ブログを生むことにつながっているようだ。しーまブログを開設して発表すると「モノが売れた」という事例が生まれ、奄美で店をオープンするときにしーまブログを開設する人が増えていった。奄美大島で行われたサーフィンの世界大会(2012ASP公認国際プロサーフィン奄美大島大会)では、ブログにバナーを貼るスポンサーが集まりすぎるほどとなった。

 それぞれのブログには広告が貼り付けられており、ここからしーまブログは収入を得ている。それだけで大きく稼げるわけではないが、フリーペーパーなどと組み合わせ、その広告営業などでも、ブログと併用して集客を提案したりもしている。

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