訪日ムスリム旅行者が本当に求めるおもてなしとは

守護彰浩フードダイバーシティ株式会社代表取締役

2018.01.09

各自治体に見る、日本のハラール対応の今

 次に日本国内のハラール対応の先行事例についてみていきましょう。実は今、各地でムスリム受け入れブームが巻き起こっているのをご存知でしょうか? 全国で10以上の地域・団体が、ムスリムおもてなしマップを作成し、受け入れ体制を強化しています図6

訪日ムスリム旅行者が本当に求めるおもてなしとは
図6 モスクと連携して作成した台東区の「ムスリムおもてなしマップ」。2015年度は2万部の発行からスタートし、2017年度は8万部にまで増加

 成功している地域は、共通して「官・民・モスク」などが三位一体となり町ぐるみで対応を進めています。
※官…自治体など / 民…レストラン、ホテル、情報メディアなど、対応プロセスは下記の通り至ってシンプルです。

①セミナー  … 地域の事業者向けにハラール対応に関して説明

②実地指導  … セミナー後、個別相談でラストワンマイルをサポート

③マップ作成 … 対応店舗が増えてきた段階でマップを作成

④情報発信  … SNSやWEB上で地域のコンテンツを発信

 弊社としてもこうした取組みを広げるべく、日々全国各地で活動を行っています。 

多様化するムスリムのニーズ、重要なのは現場

 これまで日本のハラールの現状を見てきましたが、ハラールの現場は日々目紛しい勢いで変化していると感じています。それは事業者だけでなく、ムスリム旅行者のニーズにおいても同様です。
 ひと昔前までは、ハラールレストランの選択肢が限られていたため、
 「あのお店はハラール対応しているから行こう」
という会話を良く耳にしました。
 しかし、ここ数年でハラールレストランが増加してきたこともあり、
 「A店よりB店の方が美味しいからB店に行こう」
といった具合に、味・接客など、サービスレベルを比較してお店を選ぶシーンを見掛けるようになりました。
 少しずつ健全なマーケットになってきたと感じています。
 また、以前は「日本食でハラールといえばラーメン」という節が強かったのですが、
最近では和牛や天丼など、料理のジャンルも広がりを見せています。
 しかし、これらもあくまで現段階のニーズでしかありません。これが1年後、ないしは半年後にどの様になっているかは分かりません。大切なのは、現場のムスリムの声を聞き、1次情報を取りにいくことに尽きるのではないでしょうか?

(参考データ)

注1:国立社会保障・人口問題研究所より http://news.mynavi.jp/news/2017/04/22/040/

注2:拡大するハラール市場と現状(ブランド総合研究所)
http://www.maff.go.jp/tohoku/kihon/yusyutu/kyougikai/pdf/tanaka-siryou.pdf

注3:食品輸出拡大に向けたムスリム市場の重要性 (デロイトトーマツ)
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_kikaku/pdf/5c01.pdf

著者プロフィール

守護彰浩

守護彰浩フードダイバーシティ株式会社代表取締役

フードダイバーシティ株式会社代表取締役、流通経済大学非常勤講師。
2007年千葉大学卒、世界一周後、楽天株式会社に入社。5年間の勤務を経て独立し現職。2014年1月に日本国内のハラール情報を世界に発信するポータルサイトHALAL MEDIA JAPANを、2015年4月にはハラールレストラン検索サイトHALAL GOURMET JAPANの運営を開始する。浅草で開催したHALAL EXPO JAPAN 2016では、国内外の事業者約1万人以上を動員。全国の自治体や大学、企業などで現場ムスリムの声を届ける講演を展開している

1 2 3

スポンサードリンク