地域の人、地元の農家と触れあい、豊かさを思い出す KitoKitoマルシェ クリエイティブディレクターの吉野敏充さんに聞く
多くの賛同者とマルシェを手作り
マルシェには秋田県や宮城県などの県外から訪れるお客さまもいる 写真提供:新庄市商工観光課
マルシェは、構想段階から吉野さんに賛同した人たちと一緒につくってきた。会場にあるツリーデッキやブランコなどはすべて、4~5人の有志らで手作りされたものだ。
吉野:プロジェクトが進む中で、私たちに賛同する人が徐々に増えていき、輪が広がっていきました。ここの世界観を共有しながら一緒につくっていくことで、マルシェの魅力が人づてに伝わっていったのだと思います。
出店する店は、山形県内だけでなく、仙台や秋田などの各地から集まる。現在マルシェに登録されている店は約100軒あり、吉野さんらは月ごとに決められたテーマに合わせて、その店の中から出店者を選ぶ。地域の人に知ってもらうチャンスを出店者に与えたいという思いから、新しく農家を開業した人や、商店街にあるの個人経営の店などを選ぶことが多い。
吉野:出店者の方々には、その日のお金を稼ぐためではなく、お客さまと会話をしてほしいという話をしています。1日に何個売り上げたかよりも、出店者とお客さんがつながった感触を見ることができると嬉しいです。
マルシェで店を知り、実際に店舗まで訪れたお客さまもいる。このようなつながりが生まれることで店は活気付き、顧客は好きな店を見つける。店、顧客、地域それぞれが豊かになっていくのである。
マルシェが開催される広場に隣接した場所にある「commune AOMUSHI(コミューンアオムシ)」は、マルシェが開催されていない時期でもこの場所を楽しめるようにとオープンした。ほぼ毎日営業し、1階に地元食材を使ったカフェが、2階には地元の工芸品や雑貨などの販売スペース、そして、本をシェアすることで人とつながるシェアブックスペースがある。このシェアブックスペースに誰かに読んでほしい本を2冊持っていくと、好きな1冊と交換することができる。コミューンアオムシは、地元の農家と地域の人をつなぐ場所である。
コミューンアオムシの1階はカフェスペース(左)、2階(右)では地元の工芸品などが販売されている
ブックシェアスペース。いすに座りながら、落ち着いて本を選ぶことができる
新庄市は、今後、エコロジーガーデン全体の管理を民間に委託していくことを考えている。吉野さんは、その委託先になって敷地全体を管理していきたいと話す。
吉野:まだ委託先は決まってはいませんが、もし私たちが委託先となって敷地全体を管理できるようになれば、動物とのふれあいができたり、貸し農園を運営したり、子ども向けの遊具を作ってみるのもいいなと考えています。
今後、KitoKitoマルシェだけでなく、エコロジーガーデン全体が、人と人をつなぐ場所、人と触れあうために訪れる場所になっていくかもしれない。
(インタビュー・文/井手真梨子)
■取材対象者プロフィール
山形県新庄市生まれ。東京デザイン専門学校卒業後、SOFT ON DEMAND、SOD artwokrsを経て、2010年吉野敏充デザイン事務所を設立。さまざまな案件のクリエイティブディレクションを手掛けると同時に、地域の伝承野菜(在来野菜)や工芸品を後世に繋いで行くプロジェクトの企画・運営も手掛けている。
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