地域の人、地元の農家と触れあい、豊かさを思い出す KitoKitoマルシェ クリエイティブディレクターの吉野敏充さんに聞く
KitoKitoマルシェ当日は、多くの人が集まる 写真提供:新庄市商工観光課
KitoKito(きときと)とは、あおむしがゆったりと歩く様子を意味する方言。KitoKitoマルシェは、人と人が触れあう場所をテーマに、新庄市エコロジーガーデン「原蚕の杜」で毎月第3日曜日に開催されている。ここは、現代人が忘れている“人と触れあうことの豊かさ”を思い出させてくれる場所である。
登録有形文化財で開催されるマルシェ
吉野敏充さん
新庄の美しい自然、レトロな建造物、そして手作りのツリーデッキやブランコ。ここは、新庄市エコロジーガーデン「原蚕の杜」(以下、エコロジーガーデン)の中にあるKitoKitoマルシェの会場である。
エコロジーガーデンは、10万㎡という広大な土地を有している。ここは、昭和9年に安価で良質な絹糸の安定供給を図るため国が蚕業試験場福島支場新庄出張所として開設、その後、改称、改組を重ねながら平成12年に閉所となるまでの66年間、日本の蚕糸産業を支えてきた。閉所後、この場所が国から市に譲渡され、平成14年9月「新庄市エコロジーガーデン」として開園、平成25年3月にはここの建造物が国の登録有形文化財として登録された。新庄市は、歴史ある建造物と美しい自然を重要な遺産として後世に残すため、観光や地域住民の交流拠点としての整備をしてきた。
KitoKitoマルシェはその一環で、新庄市で吉野敏充デザイン事務所を営んでいた吉野敏充さんが“人と人が触れ合う場所”として企画した。
吉野:売り手と買い手がコミュニケーションをとれる場所にしたかった。コミュニティをつなぎ直すというか、人と人とのつながりを復活させれば、地域が元気になるんじゃないかと思うんです。
KitoKitoマルシェでは出展者とお客さまが会話をし、その商品に込められた思いを生産者の顔を見ながら直接聞く、そういった触れ合いがある。買い物をすることだけが目的ではなく、生産者と訪れた人のつながりをつくることが大切なのである。今の日本は、大量生産や大量消費が当たり前となっているが、“あの人が作った野菜だからおいしい”“あの人が作ったものだから買いたい”といった地域内のつながりをつくることで、地元を好きになるのではないか、と吉野さんは話す。
吉野:この町を好きになるかどうかを左右しているのは、自分自身だと思うんです。地域の人たちと仲良くなれるか、地域の人とのつながりがあるかどうかで、住みやすさや町の良し悪しを決めているのではないでしょうか。
新庄市は豪雪地帯で、冬の生活は厳しい。それが原因でまちを出ていく若者もいる。地域の人たちが、将来もここに住み続けたいと思えるまちにすることが、吉野さんが理想とすることなのである。
手作りのツリーデッキ(左)とブランコ(右)
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