「岐阜の宝もの認定プロジェクト」から考える地域資源の可能性

古田菜穂子岐阜県観光交流推進局顧問/観光プロデューサー

2015.01.19岐阜県

外国人観光客を視野に入れて、文化資源を観光資源に 「東濃地方の地歌舞伎と芝居小屋」

 次に、伝統文化資源を観光資源化した事例として、2010年「岐阜の宝もの」に選ばれた「東濃地方の地歌舞伎と芝居小屋」をご紹介します。

地歌舞伎小屋「明治座」(岐阜県中津川市)
地歌舞伎小屋「明治座」(岐阜県中津川市)

 「地歌舞伎」とは、地域に残る芝居小屋で、素人役者が自腹を切ってお客さんに観ていただく歌舞伎のこと。岐阜県では全国最多の29の団体が活動しており、そのうち16団体が「東濃地方」と呼ばれる県の南東部に集中し、新旧7つの芝居小屋を拠点に今も定期的に上演を続けています。

 毎年、無料で行われる定期公演には、地歌舞伎ファンが各地から訪れますが、実は何度も存続の危機に直面しました。しかし、地域の大切な宝を無くしてはいけないと東濃地方の15団体が集まって「東濃歌舞伎保存会」を発足、自らが舞台に立ち、地域の伝統文化を地域が支え合うというスタイルを継承してきました。そんな活動が評価され、「宝もの」に認定されると、保存会、行政、地域が一体となった「岐阜自慢ジカブキプロジェクト」として、国内外に向け「東濃地方の地歌舞伎と芝居小屋」という観光資源づくりを目指す事業を開始しました。

 当初、関係者には大きな戸惑いがありました。自分たちは人寄せパンダじゃない、貴重な伝統文化をエンターテイメント的な見せ方をしてもよいのだろうか、外国の人に地歌舞伎のことが理解できるのか、行政的に言えば、文化振興と観光振興課との壁…といった感じです。その戸惑いも十分理解できましたが、地歌舞伎を観光資源する目的は、経済循環を目指すことはもちろんだけれども、貴重な伝統文化や芸術を後世に残すことにも繋がると力説しました。まず一般の人々にも興味を持っていただける<入り口体験>をつくり、そこから地域に滞在し、食事をし、この地域の人と触れ合って物心両面でのお土産を持ち帰り、またこの地に来たいと思っていただける経済と心の循環の仕組みをつくる必要があると考えました。

地歌舞伎メイク体験
地歌舞伎メイク体験

 そのために常時「地歌舞伎」に触れられる芝居小屋ガイドの養成や、地歌舞伎メイク体験、衣装体験プログラムなども作りました。英語解説者の育成や、夏休みの子ども向け体験プログラムの実施、「地歌舞伎役者体験ツアー」という1泊2日で近くの温泉宿に泊まる役者体験ツアーも作りました。それに合わせ、お昼のお弁当や地域の素材を使った和菓子などのお土産も開発しました。また2010年の上海万博への出演を皮切りに、2011年にはシンガポールの旅行博、2012年には新宿歌舞伎町での「岐阜県地歌舞伎座」公演や、高松の旧金比羅大芝居「さぬき歌舞伎まつり」への招待、2014年の11月にはフランスの観光展など、国内外での各種プロモーションにも参加するまでになったのです。

フランス・アルザス国際観光展にて
フランス・アルザス国際観光展にて

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