訪日中国人観光客の求める日本旅行

梁春香東洋大学国際地域学部国際観光学科教授

2015.02.02

訪日中国人の真の目的とは

 2014年、訪日外国人旅行者数が1,300万人を突破した。その中で、訪日中国人旅行者数は200万人強で、前年比伸び率は80%以上という統計となっている。訪日中国人旅行は量的な規模拡大だけでなく、経済効果も大きいことは目を見張るもので、中国の存在が際立つ。

 2014年10月31日に観光庁が発表した「訪日外国人消費動向」によると、2014年7月~9月の訪日外国人全体の旅行消費額は5,505億円で、そのうち3割強を中国が占める(客数ベースで中国は全体の約2割)。中国は前年同期が913億円だったのに対し、今年は1,847億円と約2倍に拡大したという。その1,847億円を費目別にみると、約半分の948億円が「買い物代」である。日本のテレビ番組もよく訪日中国人の買い物場面として、両手で買った商品を抱えたり、手に提げている様子を取り上げている。

 上述した統計データと現象について、以下のことが言えよう。日中国家関係の悪化にもかかわらず、中国人がたくさん日本に来ている。そして、お金があり、「爆買」をする。これはなぜなのか。そもそも訪日の中国人が何のために来ているか、また日本に求めるものが何なのかを考えなければならない。

日本や日本人に触れたい

 その理由としては、筆者自身は、なによりも日本と日本人を知るために訪ねてきているのではないかと思っている。このような民間レベルの観光交流は、日中両国民の相互理解への近道になるし、またその滞在中、付きものである買い物という行動は、日本の国民経済発展に貢献度が高いと理解してよい。

 中国人が訪日旅行に求めるものは何なのか、ここで考察したい。

 一見、中国人の訪日は買い物のためのように見えるかもしれない。それはいささか誤解していると思う。図1に示されたとおり、中国人の海外観光旅行の動機に占める「買い物」の割合はわずかで、「見聞を広める」、「リフレッシュ」、「好奇心」が主だということは明らかである。

杜江戴斌著「中国出境旅游発展年度報告書2006年」により作成
杜江戴斌著「中国出境旅游発展年度報告書2006年」により作成

 中国人の日本旅行も同様だと認識してほしい。人々が観光旅行に出かける場合、だれでも買い物をしたいという潜在的な欲求があるが、しかし、多くの場合、それが出かける目的ではないことを指摘しておきたい。訪日観光旅行の中国人が求めるものの本質としては、あくまでも観光旅行を通して、日本と日本人に触れ合い、異文化に触れることにあると言いたい。さらに言えば、これまで、さまざまな情報によってつくられた、中国人が持っている対日本のイメージを、自分の目で見、肌で感じて再確認することにあるのではないか。

異文化体験(増上寺にて)
異文化体験(増上寺にて)

 筆者自身が中国人の訪日観光行動に関する研究のために実施した調査の結果、上位13位までの観光行動をまとめると、以下の5つの観光行動中心であることが明らかになった。

1.自然景観に触れ合う観光行動
2.異文化に触れ合う観光行動
3.歴史的・伝統的資源に触れ合う観光行動
4.現代的資源に触れ合う観光行動
5.免税店や土産品の購買行動

となっている。これらが訪日中国人が求めるものだと言っていいだろう。

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