食文化体験は訪日観光の新たなトレンドに ――外国人向け料理教室主宰・秋山亜裕子さんインタビュー
外国人が思う「なぜ」に丁寧に答える
―料理を教える上で、大切にしている点はなんですか?
秋山:料理教室を立ち上げたときから、日本の文化的背景を伝えられるような教育的な要素がコンテンツに必要だと考えていました。外国人のお客さまが「なぜ」と思う疑問にきちんと答えることを大事にしています。
教えていると、日本人なら普段そこまで疑問に思わないようなことを尋ねられたりします。
例えば、酢飯をうちわで仰いで冷ましていると、「なぜ冷ますためにうちわを使うのか」「冷ますなら冷蔵庫に入れた方がいいんじゃないか」と聞かれます。
そういう時には、「照りをだすため」「一気に冷ますことで糖分が結晶化してツヤがでて、見た目がよくなる」と答えます。ご飯が白ければ白いほどおいしいという日本人独特の美的価値観がそこにはあるんですね。そういった当たり前に思えるようなことも丁寧に伝えるようにしています。
照りを出すため、うちわで酢飯を仰ぐ。お米をじっと観察
味噌を使うときはいつも3~4種類を用意し、テイスティングしてもらっています。白みそ、赤みそ、信州みそなどを試食してもらうと、「どうしてこんなに味が違うのか」「色の違いはどこから出てくるのか」など、色々な質問が飛び交います。
あと、味噌汁は、味噌を使っていることは知っていても、出汁がベースになっていることは意外と知られていません。味噌だけで作っていましたという人が多いです。そこで教室では、削る前の鰹節を用意し、どうやって作られているか、削る箇所によって味がどう違うか、削り方によって用途がどう変わるかなどを説明しています。
実際に削った鰹節をテイスティングしてもらおうとすると、「キャットフードみたい」と断る人もいます。それでも、その鰹節で出汁をとって、お味噌汁にして出すと、「魚臭くない」とびっくりされますね。料理教室では五感を使った体験を常に心がけています。
和食のレッスンでは、最初に一汁三菜の意味を説明し、メニューを紹介した後に、精進料理であるゴマ和えや、四角い卵焼き器で玉子焼きを作ったりします。照り焼きをご存じの方は多いですが、名前の意味までは知らないため、「照り」はglazeやshiny、「焼き」はgrillやcookだよと教えてあげると、「じゃあ照り焼きチキンはShiny grilled chickenって意味だね」と会話が弾みます。
まず秋山さんがシャリの握り方をデモンストレーション。シャリを置く位置や指の使い方も丁寧に解説
ご飯の量を図りながら、シャリを握る
「・・・上手く握れたかしら」
握り寿司、巻き寿司、押し寿司など寿司の違いも説明
今度は巻き寿司に挑戦
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