坂で楽しむ観光地
続いて関東に参りましょう。
東京下町で粋な団子 東京都日暮里・芋坂
芋坂
「吾輩は猫である。名前はまだない」 このフレーズで始まる文学作品を知らない日本人はいないでしょう。夏目漱石の小説『吾輩は猫である』です。この作品に登場する坂があります。ご主人を訪ねてきた元書生さんに「上野にしますか。芋坂へ行って団子を食いましょうか」と誘うシーンがあるのです。
この芋坂というのが山手線の日暮里駅のそばにあります。あると言っても、坂そのものは鉄道敷設でほぼ消滅していて、看板だけがあります。ところが、この団子屋さんはきちんと残されているのです。坂下にあったお店は現在改装工事中ですが、駅中と駅前に臨時店舗があり、お団子もいただくことができます。
2019年まで改装のため日暮里駅前に臨時店舗を構える
お団子
日暮里のあたりは下町情緒が残るまちです。「やねせん」(谷中・根津・千駄木の頭文字をつなげたもの)という密かな人気スポットになっていて、カフェやアトリエなどがたくさん出店しています。 谷中銀座には「夕やけだんだん」という猫が集まる名坂もあります。パンダがいる上野動物園、西郷さんや美術館、博物館が集中する上野公園も山手線で2駅先です。下町コースとして一巡するのもよいのではないでしょうか。
夕やけだんだんという名称は、夕方この階段に座り谷中銀座方向を見ると、美しい夕焼けが見えることから一般公募で選ばれた
人懐っこい猫が多い
意外かもしれませんが、日暮里からは東京スカイツリーがきれいに見えます。谷中霊園の高台から線路を挟んでスカイツリーを眺めていると、時間が経つのも忘れてしまいます。 ここはJRだけでも山手線ほか在来線4路線、東北・上越新幹線、京成線、京成スカイライナーがすべて見られる、隠れた「鉄」スポットでもあるのです。
谷中霊園の北側から東京スカイツリーを望む
園路沿いにはたくさんのサクラが植えられている
東京タワーの手前には坂
ついでと言っては失礼ですが、元祖東京タワーにも行ってみてはいかがでしょうか。あまり知られていないのですが、東京タワーは山の上に建っていて、山があれば当然坂があります。きちんと名前はついていませんが、大江戸線赤羽橋駅側からアプローチすると、「とうふ屋うかい」を左に見ながら結構急な坂をのぼります。東京タワーは当然エレベーターでのぼりますが、エレベーターにたどり着くまでに坂があるとは皮肉なものですね。
次は東京近郊の温泉観光地といえばここ、熱海です。
やっぱり海が好き 静岡県熱海市・石畳の坂
熱海は昔ながらの温泉街のイメージですが、リニューアルしているホテルも多く、若い人や子連れでも結構楽しめます。坂好き、まち好きの人には「熱海まち歩きガイドの会」が提供している6つのコースがおすすめです。そのうちの一つが石畳の坂道を歩く「石畳浪漫コース」で、野村証券など大企業の別荘が並ぶハイソなエリアをめぐるコースです。
昭和初期に建築された別荘を眺めながら石畳の坂道が続く
石畳の坂道には名前がありませんが、パリのような趣を醸し出しています。坂下にはオーシャン・ビューが広がり、遠くには初島を見ることができます。 この後は、少し足を伸ばして世界遺産「韮山 (にらやま)反射炉」のある伊豆の国市に行ってみてはいかがでしょうか。熱海とは違った泉質の温泉も楽しめます。
坂下からの初島
スポンサードリンク