OpenStreetMapとTwitterのつぶやきを活用した観光地図「てくぬま」を作成 地域の課題をみんなで解決するCode for Numazuの活動

市川博之Code for Numazu代表、静岡県地域情報化コーディネータ

2017.04.10静岡県

データやICTを活用した観光

 情報発信面から観光を見ると、近年インバウンドで個人旅行(Foreign Individual Tour)が注目されていますが、日本人向けの地方都市旅行は、以前から個人旅行が中心となっています。

 しかし、今まで観光都市でなかった沼津は、ガイドに載っているような情報だけでは、何度も訪れる旅行客には情報が足りませんし、観光地も分散しているため、その区間や間の移動をどうするかといった課題がありました。

 また、商店街エリアは、地元に向けた商売が中心で、観光客向けの作りとはなっていません。地元の人たちが買い物や食事をしやすいように作られているため、お店の入口が分かりにくいなど、初めて来た観光客に十分に情報を提供できていない状況でした。

 「オーソドックスな観光地を知りたい」「旬な情報が欲しい」「新しいことを知りたい」といった観光客のニーズを満たすためにデータやICTでできること、それは、変化に迅速についていける情報を構築することです。

 1.ベースとなるデータを作る(地域住民)【情報のデータ化】

 2.検索できる形で情報提供する(Code for Numazu)【システムで利用可能にする】

 3.参加者で一緒に更新する(地域と観光客の協働) 【参加者全員で担当する】

 観光客にしか分からない点、住民にしか分からない点、それぞれと協働することで双方の目線から見た価値の向上が図れるのだと思います。情報を活用した小さなコミュニティを形成することで、新たな価値が醸成されます。

てくぬま誕生の経緯

 観光地図「てくぬま」で、ICTを含めた具体化をどのように進めてきたのかをご説明します。

OpenStreetMapとTwitterのつぶやきを活用した観光地図「てくぬま」を作成 地域の課題をみんなで解決するCode for Numazuの活動
OpenStreetMap  © OpenStreetMap contributors

1.OpenStreetMap&マッピングパーティ
 ベースとなるデータを作る部分では、OpenStreetMapという誰でも自由に参加して、誰でも自由に編集でき、誰でも自由に利用することができる地図に、沼津駅南から西浦に至る範囲の地図入力を完成させることから始めました。地図自体は莫大な記入量が必要で、現地の情報も必要となるため、地域の人たちと協力して情報を作ろうと、マッピングパーティを開催しました。これは現地踏査と入力をセットで実施するイベントで、マッピングパーティ実施により、地図は現在ほぼ完成している状況です。

OpenStreetMapとTwitterのつぶやきを活用した観光地図「てくぬま」を作成 地域の課題をみんなで解決するCode for Numazuの活動
マッピングパーティは『ラブライブ!サンシャイン!!』の聖地マッピングをしながら、商店街ではシャッターを下ろしたの店の位置を調査し、ランチや休憩ができる店の情報も集めた

OpenStreetMapとTwitterのつぶやきを活用した観光地図「てくぬま」を作成 地域の課題をみんなで解決するCode for Numazuの活動
OpenStreetMapには『ラブライブ!サンシャイン!!』の聖地やランチや休憩ができる店の情報がマッピングされている。 © OpenStreetMap contributors

 OpenStreetMapができたことで、同人誌で観光ガイドマップを作っている有志の方々も、ライセンス違反とならない地図の利用が可能となり、手作りのガイドブックにも活用いただいています。みんなで地域の情報発信していくベースづくりの効果が表れています。

2.OpenStreetMapのアプリと、Twitterのつぶやきキーワードをまとめた「てくぬまリスト」開発

OpenStreetMapとTwitterのつぶやきを活用した観光地図「てくぬま」を作成 地域の課題をみんなで解決するCode for Numazuの活動
上からつぶやかれているキーワードが多い順に並ぶ「てくぬまリスト」

 OpenStreetMapができた段階で、紙の観光地図と、アプリ、てくぬまリストの3つで情報展開していくことを決めました。

 紙の観光地図は、地元沼津で協力してくれる各店舗に置くことにより、立ち寄り効果とつぶやきを合わせた地域との交流の流れを生んでいます。

 アプリについては、地図データが更新されるとアプリで表示されるデータも更新されるため、OpenStreetMapのライブラリを使って、新しい観光スポットがすばやく地図に表示されるようCode for Numazuで開発しました。

 また、つぶやきキーワードをまとめた「てくぬまリスト」は、TwitterAPIを利用し、サーバー上でつぶやきを解析して作成しています。これを見れば、ここ1週間の沼津のホットなキーワードが何だったのかを知ることができるようになっています。

 この段階で、ようやく、データからICTを利用した仕組みへと変化しました。

3.Twitterのハッシュタグを利用したインタラクティブな情報共有
 既に観光客と地元の商店がTwitter上でやり取りを始めている状況に、スポットの情報を共有できる「#てくぬま」を上乗せする形で、サービスを提供することになりました。
 紙地図との相乗効果もあり、観光客の皆さんにも受け入れてもらえ、当初50ほどだったキーワードが、現在130以上に増えています。観光客の皆さんと一緒に80以上のキーワードが共有された形です。
 私は、このハッシュタグが利用された理由は3つあると考えています。

 ①地元の商店街の方々の協力

 ②観光客の皆さんがコミュニティへの情報共有としての意識をもっていたこと

 ③つぶやきの中に気付きとなる情報が入っていたこと

 それぞれが地道に活動を続け、つながっていった結果だと思います。
 リリース以降、上記①~③を通じて、下記の流れが生まれています。

 ・日々のリアルタイム情報は「#てくぬま」で確認、情報の発信もリアルタイムに反映

 ・週次の情報は「Togetterのまとめサイト」、てくぬまリストで確認

 ・数カ月に一度、「#てくぬま」の情報を紙地図にも反映させ情報更新

 情報は、固定化させてしまった段階で古くなってしまいます。常に流れを作ることが、観光面で見たときの情報の取り扱い方として大切です。

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