前述したように、ＷＷＯＯＦでは、お金のやり取りはありません。自分のできることを相手にあげるのです。そのため、常に相手のことを念頭に置かなくてはならず、特に、毎日の食事を用意していて、相手に合わせて舵取りをしているホストにとっては、実際、面倒なときもあります。しかし、ＷＷＯＯＦは長い間、続けられてきました。そして、少しずつですが登録者が増えてきています。

　なぜなのでしょうか？　それは、少々手間がかかっても、お金では取得できないものが得られるからであり、楽しいからに違いありません。閉塞的にもなりがちな地方で暮らす自分の我が家に、日本各地から、そして、はるか彼方の外国から、ウーファーたちがわざわざ交通費を出してやって来てくれるのです。繰り返しの日常に彩りを添え、大きな刺激を与えてくれるのです。

　さらにホスト側は、オーガニック農業を実践している人たちであることが大きな理由になるでしょう。実のところ、日本全国の農家のほとんど、99.5％以上が有機農家ではありません。有機農業は大規模経営には合わず、大量生産できませんので、一般的に通常の農家と比べて所得が高くなると言えません。それなのに、なぜ有機農業を選択しているのでしょうか？　

　有機農業を運営している人たちは、概して言えば、利他的です。自分たちの今の利益を求めているだけではなく、子孫の幸せを願って安心安全な暮らしを作ろうと、あえて、手が掛かる有機農業を選択している人たちだからです。有機農家たちは、自分や家族だけではなく、地域の人々や、日本全国、世界各国の一人一人の幸せと、人と自然界の平穏な均衡を願っています。そんな人がホストになっているので、さまざまな人たちを寛容な気持ちで受け入れできるのだと思っています。

　人に幸せになってもらいたければ、まずは自分が幸せでなくては行動が起こせないはずですよね。ＷＷＯＯＦジャパンに登録しているホストの幸せの度合いを調査したところ、ホストの幸せ度は見事に、一般の日本人より高い割合でした。

上　星野氏が2014年にＷＷＯＯＦジャパンに登録しているホストの幸せ度を調査　10点が「とても幸せ」0点が「とても不幸」の範囲で回答を得た。下　星野氏が「2011年度内閣府国民生活選好度調査結果」より一般の日本人の幸せ度を作成