コレクター急増中 ファンが夢中になるマンホールカードの仕掛け
マンホール自体に魅力が備わっている
山田さんは、「われわれはきっかけをつくっただけなんです。そのきっかけを受け取ってくれた人は、元々マンホールが好きだったんだと思いますよ」と謙虚に語った。
山田:私たちが活動する前から、旅先でマンホールの写真を撮る人がすでにいました。マンホールには都市名とそのまちを代表するデザインが描かれています。旅先などでマンホールの写真を撮れば、その土地を訪れたということが一目でわかります。
そうした面で、マンホールとSNSの相性は良く、マンホール自体にもSNS利用者の心をつかむ要素があるようだ。また、マンホールには他にもファンの心をつかむ要素がある。
山田:マンホールのデザインはそれぞれの自治体が管理していて、自治体によってマンホールの種類が異なります。1種類のところもあれば、5種類のところもあり、色付きが1枚しかないところもあれば10枚あるところもあります。そこも、ファンが面白いと思っているところで、マンホールカード、そしてマンホール自体の魅力なのかなと思います。
また、マンホールのデザインはマンホールメーカーが考えているんです。マンホールをつくるうえで一番大切なのは安全性で、各メーカーは安全面を考えながらデザインしています。マンホールは、どの角度から入っても滑ったり凹凸が激しくなったりしないように設計されているので、絵が入ってない部分があまりないんです。そういう制約条件があるからこそ、詰まったデザインでどこか美しく見えるんでしょうね。
このようなマンホールの魅力に惹かれた若い女性のファンも増えていて、最近では、「マンホール女子」という言葉も出てきている。
自治体ごとに異なるマンホールのデザインは個性的で美しい
「世界に誇れる文化物」として日本の宝に
山田さんは、マンホールカードの今後の展開を次のように語った。
山田:マンホールは公共物。社会に貢献していくことが大事だと考えています。熊本などの被災した地域に、新しいマンホールを入れ、マンホールカードをつくることで、地域を活性化できれば良い。このように社会に貢献していくことは忘れたくないと考えています。
もう一つは、ビジョンとして描いているのですが、公共以外でマンホールカードを使って下水道を広報できれば良いなと思っています。例えばビール工場、化粧品工場、おもちゃ工場などの工場内にあるマンホールです。工場に行ったときにそのマンホールカードをもらえるようになれば、今の下水道界以外の人も自然にマンホールを広報してくれるようになります。そうなれば、世界に誇れる文化物である日本のマンホールが、日本の宝になっていくのではないかなと思います。
山田さんが語るように、マンホールカードはあくまでも“きっかけ”なのかもしれない。しかし、その“きっかけ”に多くの人の心をつかむ要素が詰まっている。マンホール自体の魅力ももちろんあるが、カードに施された様々な仕掛け、工夫、ルール作りなど、そのすべてが合わさって魅力となっている。実際に、マンホールカードを見て初めてファンになった人もたくさんいるだろう。
山田さんは、「マンホールカードをマンホール自体と同じように定番化していきたい」とも語っていた。国民にとってマンホールカードが普通の存在になることが、山田さんの理想だという。
(取材・文/井手真梨子)
■取材対象者プロフィール
1975年、埼玉県生まれ。大学卒業後、おもちゃの小売会社に就職。30歳を前に、現在の日之出水道機器(株)に転職し、入社から7年余りで同社広報部へ異動。2013年、下水道広報プラットフォーム(GKP)に加わり、マンホールカード推進リーダー、マンホールサミット統括リーダーとして、マンホールの魅力を全国にPRしている。
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