有田の新しい風は、どんな風? 佐賀県有田町 有田まちづくり公社
有田町と連携
2015年4月に有田まちづくり公社が設立されて最初に行った事業の一つが、町からの委託を受けて行ったふるさと納税の推進事業だ。「ふるさとチョイス」のサイトで、佐賀牛や有田焼の食器セットなど、なかなか買えない返礼品をそろえ、コンシェルジュとして質問を受ける態勢も整えた。こうした取り組みの成果で、納税額は前年の560万円から、4カ月で3億円を突破するまでになった。
もう一つが「有田まちなかフェスティバル」だ。これは、有田町民が当事者となってプログラムを主催し、それらを一体として発信するものである。有田焼創業400年に向けた事業として、町への提案が通り、町の委託事業として行っている。
藤山:有田へ来たことのない人に来てもらいたいと考えています。有田はゴールデンウィークの「陶器市」というイメージの人も多いと思います。でも、有田って秋も素敵なんですよね。盆地で涼しくて、紅葉もある。都会の人ごみでざわざわしたくない、ゆっくりしたい、という人には最高の場所です。でも、そんなことをひたすら言っていても、なかなかみんな来てくれない。だったら、いろいろなイベントを調整して、秋は有田に行けば何かやっているという状態をつくりたいのです。
2015年は11月の1カ月間、プレイベントとして初めて開催した。住民に向けたプログラムづくりの説明会や研修会を何度も行ったそうだ。いざやってみると、アンケートでも好評で、プログラムづくりに挑戦した町民たちからも「初めてで不安だったけれど目標のところまで達成できた」などと感想が寄せられたそうだ。
公社にはこのように町や町観光協会と連携して行っている事業が多い。これは一つには代表取締役社長の高田亨二氏の貢献もあるようだ。20代から60代まで、スタッフの年齢の多様さが、公社にできることをより多様にしているようだ。
明るく柔らかく、出会いを大切に
有田まちづくり公社の設立にあたっては、有田商工会議所から100万円の出資を受け、さらに2015年10月には、株式会社地域経済活性化支援機構のファンド運営子会社であるREVICキャピタル株式会社が株式会社佐銀キャピタル&コンサルティングと共同で運営する「佐賀観光活性化ファンド」から、1,000万円の第三者割当増資を受けた。多額の出資を受け、プレッシャーを感じてもおかしくないはずだ。
しかし藤山さんからはそのようなプレッシャーや焦りは感じられなかった。むしろ、将来に自信を持っているようでもある。公社を設立した後、藤山さんが他のメンバーに声をかけて入社してもらい、有田に移住してきてもらったそうだ。今は4人でシェアハウスに住んでいるという。
有田まちづくり公社のオフィス
メンバーは明るく、さまざまな人との間に壁をつくらない柔らかい雰囲気だ。有田の若い世代とはすでに仲が良く、最近では地域の祭りの打ち上げに参加して一緒に飲んだという。有田には焼物関係者以外にも、若い世代が多く住むそうだ。取材中、藤山さんがランチに行った店で、主人に有田まちなかフェスティバルのポスターを張ってもらうようお願いする様子からは、藤山さんらがまちのあちこちでかわいがられていることが想像できた。
一方で志は高く堅い。「シリコンバレーにいる若者を思って、もう1時間頑張ろうって仕事をします」と藤山さんは話す。
「常に人材を探している」と話す藤山さん。今年は、有田まちづくり公社のウェブサイトでマンガ『有田探訪記』の連載を行った。これは、有田に初めて来た女子に、女子4人が有田の魅力を伝える女子旅マンガだ。マンガ家の中野充さんは、有田町の高校出身で隣の武雄市に住む。中野さんとはもともと知り合いではなかったが、クリエイターを探して周囲に声をかけていて見つかった。
藤山:有田をいろいろな形で発信したいので、マンガもありだなと思っていました。イメージを伝えて描いてもらいましたが、まだまだネタはあるので続編もつくりたいですね。
事業を行おうとするとき、有田では「それができる人材が見つかるか」ということが都市以上に大きなポイントとなる。「嗅覚、直観」で探すというが、公社のメンバー自身も、3日間でリノベーションの課題解決などについて学ぶ「北九州リノベーションスクール」に参加するなどして、人との出会いの場に積極的に赴いている。また、ウェブサイトで発信して、問い合わせをもらうこともある。ただし「できれば地元の人たちの中から探したい」と藤山さんは話す。
今求めている人材の一つが飲食店のオーナーやシェフだ。おいしい飲食店は、器の活躍する場が増えることにもつながる。藤山さん自身も食通のようだが、有田では仕事が終わるころには閉まってしまう店が多いと残念そうだった。「夜まで開いているおいしい店がもっとあってほしい。ぜひ有田でチャレンジしてほしい」と話す。
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