有田の新しい風は、どんな風? 佐賀県有田町 有田まちづくり公社
佐賀県有田町は日本初の磁器、有田焼の生産で有名な地域だ。まちには赤レンガの煙突や磁器の看板、有田内山の重要伝統的建造物群保存地区など、焼物のまちの文化が横たわる。ゴールデンウィークには「陶器市」でにぎわう。今年は有田焼創業400年の節目の年だ。
この有田町で2015年4月に「有田まちづくり公社」が設立された。メンバーは全員が移住者だ。取締役の藤山雷太さんは「観光という切り口から有田のエリアの価値を上げたい」と話す。伝統産業のまち有田町で新しい風となっている彼らは、どんな人物、どんなチームなのだろうか。その活動やこれからの展望について藤山さんに伺った。
有田内山の重要伝統的建造物群保存地区
「有田まちづくり公社」取締役藤山雷太さん
有田の「豊かさ」を伝える
藤山さんは佐賀市出身で、有田町には祖父母の家があり、伯父が窯を経営していた。九州大学卒業後はDeNAに勤め、インターネットの広告営業やサイトの改善提案などを行っていた。そのころ、新興期の「コロプラ」の位置ゲームと叔父の窯のタイアップを企画した。窯に買い物に来るとオリジナルのカードがもらえ、それを使うとゲーム上のレアアイテムがもらえるというものだ。これにより、1年間に1,300人もの人が窯元を訪れることとなった。
藤山:職人さんにとっては、毎日絵付けをするのは当たり前ですが、お客さんにとってはとても新鮮。『こんなにお客さん来るとね』と、とても感謝されて、面白いなと思いました。
地域で働く魅力を感じた藤山さんは2011年、佐賀市にUターン。実家の仕事を手伝い、ECサイトなどを手掛けた。また、伯父の窯で新しい器のプロデュースも始めた。有田焼の価値を藤山さんはこう語る。
藤山:器の魅力を突き詰めて考えると『ゆたかさ』だと思います。食べ物を載せるという機能だけなら、100円均一ショップの器でも食べられます。湯呑みも何でもいい。でも今使っているものは、近所の方の蔵から出てきたのをもらったもので、買えば3~4千円はすると思います。なぜ30倍、40倍の金額になるのか。いいものを使うと気持ちもゆたかになりますし、そういった経験を通して、器というものが人々の手にどんどん渡っていくんじゃないかと思っています。
しかし「器だけで売っていても限界を感じた」と藤山さんは話す。
藤山:ゆたかさって、器以外でもいろいろなもので表現できるのではないかと思っています。有田町のいろいろな魅力をいろいろな角度から発信することで、ゆたかさが表現できるのではないか。観光という切り口から有田のエリアの価値を上げたいと思いました。有田の価値が上がってくればテナントも入ってくるし、器の価値も上がるのではないかと思います」。
有田の魅力を尋ねると、藤山さんは熱く語り始めた。キーワードは「水」だという。まちなかには小川が流れる。有田の水はおいしいというのは地域でよく言われることだ。
有田町のまちなかの小川
藤山:日本酒も有田の水でつくられています。それから龍門ダムがあって、そこではコイが食べられます。それから棚田も水の恵みですね。
有田町の「岳の棚田」は「日本の棚田百選」に入っている。他にも水源の森百選、日本の道百選、日本の紅葉百選など、有田町には全国の百選に入っているものが12もあるという。水以外にも、有田の自然や風景にはさまざまな魅力がありそうだ。
さらに暮らしやすさも魅力だという。食事がおいしい店が多く、また車なら20分ほどで佐世保まで行けるため、買い物にも困らない。
また藤山さんは魅力の一つに「炎の博記念堂」の文化ホールを挙げた。これは本格的なコンサートホールを目指して設計された、バロック建築様式を意識した内装のホールだ。子どものころから有田焼を見続けている有田の人々には、「ゆたかさ」を大切にする心やものをみる目があり、まちに蓄積する「文化」を感じられることも、魅力の一つのようだ。
※「炎の博記念堂」の正式表記は「森」の「木」を「火」に変えたもの
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