ダムの魅惑 「好き」が動かすダム観光

萩原雅紀ダムライター、写真家

2015.10.19

ダムの魅力は何と言ってもその巨大さ
ダムの魅力は何と言ってもその巨大さ

 このところ、観光地としてのダム、趣味としてのダムめぐりが徐々に人気になってきている。
 数年前まで、ダムと言えば「自然破壊」、「税金の無駄遣い」などとマスコミから大バッシングを受け、そういったイメージが定着していたが、最近ではダムの大きさや外観、役割などに興味を持ち、実際にダムを訪れて鑑賞している人を多く見かける。また、ダムの管理者側もそういったニーズに応え、イベントや見学会などを頻繁に開催するようになった。

 まだ「ブーム」と呼べるほどではないけれど、ダムを取り巻く状況はこの数年で確実に変わってきていると感じる。いったい何が起こったのか、幸いにもその変革期を間近で体験することができたので、私が見聞きしてきたことをご報告したい。

病みつきになる非日常感

 私がダムの魅力に目覚めたのは1998年ごろ。偶然ダムの建設工事現場を通りかかり、その巨大さに驚いたのがきっかけだった。ちょうどインターネットが一般家庭に普及しはじめたころで、家に帰るなりすぐにダムについての情報を検索したことを覚えている。

 しかし、当時インターネット上にあったのはいくつかの「ダム反対派」のホームページと「ガンダム」についての情報ばかりで、水を貯めるダムについての情報は、専門家向けの難しい情報しか見つけられなかった。つまりポップなダム情報はほとんど何もなかった。

 仕方ないので自分でカメラを買い、地図で見つけた各地の「ダム」を巡って情報をまとめ、2000年にホームページを開設した。

 ちょうど同時期に同じような個人のダム紹介ホームページがいくつか開設されたことを考えると、ダムの潜在的な魅力に気づいていた人は一定数存在して、インターネットというインフラが整備されたことで一斉に表に出てきたのではないかと思う。しかし、このころはまだダム事業者側からの情報公開はほとんどなく、ダム好き同士の横のつながりも活発ではなかった。

 ダムの魅力の第一は、何と言ってもその巨大さにある。河川法によると、日本では高さが15m以上のものをダムと定めている。つまり、ダムは最低でも15mあるのだ。ちなみに日本最大のダムは186m。自然の中にその巨大な人工物が突如出現するという非日常感は、一度味わうと病みつきになる。

 また、ダムには建設地点の地形や地質、用途などによっていくつかの形式がある。そしてダムの目的、すなわち必要な貯水量によって規模もいろいろ、下流に水を流すための放流設備にもさまざまな種類が存在する。それらの要素が組み合わさって造られるダムにはふたつと同じ形のものがない。これが、飽きることなく次から次へとダムを巡りたくなる最大の理由である。

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