ダムの魅惑 「好き」が動かすダム観光

萩原雅紀ダムライター、写真家

2015.10.19

放流はスペクタクル

事前に告知をすると点検放流に大勢の人が訪れる
事前に告知をすると点検放流に大勢の人が訪れる

 ところで、ダムと聞いて多くの人がイメージするもののひとつに放流があると思う。しかし実際の放流は雪解け時期であったり、台風など大雨の後であったり、実はタイミングを狙わないとお目にかかるのが難しい。しかしダムの放流はそこに人を留まらせる力がある。ダムの放流はエンターテインメントであり、スペクタクルである。あらかじめ告知して、あるいは定期的に放流が行われれば十分観光客を呼ぶ資源になる。

 実際、観光放流と称して定期的に放流を行っているダムがあり、放流日はどこからともなく大勢の人がやってくる。

 また、最近は点検放流をプレスリリースで予告して開催するダムもある。点検放流とは、ダムの水門を実際に動かして、きちんと動作するかどうかの点検と、放流された水が正しく流れるかどうかの点検を行うことを言う。

 数年前までは平日の午前中などにこっそり行われていたが、この数年は事前にプレスリリースなどで告知され、さらに休日に行うダムも増えてきた。昨年、数年ぶりに行った群馬県のあるダムでは、およそ1,200人もの人が押し寄せて大変な盛り上がりを見せた。

 点検放流は告知すれば多くの人が訪れることは間違いないので、ぜひ地元の商工会などと手を組んで、ダムを使った観光の目玉にしてほしいと思う。

 というわけで、誰もダムに見向きもしていない時代から完全な氷河期を経て、これまでになく盛り上がっている現在までの状況を振り返ってみた。ダム界一番の強みは、ダム好きとダム関係者がいい意味でお互いを利用し合えていて、ダムと地元を盛り上げるために協力しながらさまざまな活動ができている、という点にある。

 ダムが好きだから、楽しいことを考えていたらどんどん盛り上がっていった、という現在の流れは、逆風のころを考えれば誇れるものだと思うので、今後もダムと地元を盛り上げるためにまず何より自分が楽しんでいきたいと思う。

著者プロフィール

萩原雅紀

萩原雅紀ダムライター、写真家

幼少の頃、偶然父親に連れて行かれた小河内ダム(東京都)でダムに目覚める。98年、宮ヶ瀬ダム(神奈川県)との出会いをきっかけに本格的にダムの撮影を開始。以降、ライフワークとして「ダムめぐり」を続けている。これまでに訪れたダムは国内外合わせて500カ所以上。写真とデータをもとに、詳細にダムを記録するホームページ「ダムサイト」(http://damsite.m78.com/)管理人。近年は新聞、雑誌、Web等でダムの魅力を伝える記事を執筆。

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