ダムの魅惑 「好き」が動かすダム観光

萩原雅紀ダムライター、写真家

2015.10.19

「冬の時代」からダム観光拡大へ

ダムに訪れる人を爆発的に増やしたダムカード
ダムに訪れる人を爆発的に増やしたダムカード

 インターネット上にダム鑑賞という趣味を持つ人が少しずつ現れはじめた2001年、そんなダム好きたちによって芽生えた小さなブームの芽が一瞬で吹き飛ぶ巨大な嵐が発生した。田中康夫元長野県知事による「脱ダム宣言」だ。これによって、長野県内だけでなく全国的にダムに対して強烈なアゲインストが吹き荒れ、その当時はダム鑑賞が趣味、なんて人前で発言するのも憚られる雰囲気があった。

 そんな冬の時代が数年続いたあとの2006年、雪解け宣言をするように、ダム好きによるダムのDVDが、そして翌2007年には写真集が出版された。これらがさまざまなマスコミに取り上げられた結果、潜在的なダム好きを掘り起こすことに成功。作者の元には「実は私もダムが好きだった」といったカミングアウトのメールが大量に届いたという。

 同じ年の夏には、その後のダム人気を決定づけるグッズが登場した。その名もダムカードである。ダム好きの意見をもとに考案されたカード型のパンフレットで、表面にダムの写真、役割、形式などが印刷され、裏面にはスペックや位置情報、各ダムの独自情報などが記載されている。ダムカード最大の特徴は、実際に各ダムに行かないと手に入らない、という点である。また、全国でフォーマットが統一されていることで集める楽しみができ、これまでダムに興味のなかったコレクターや家族連れがダムを訪れるようになった。

 ダムカードは当初、国土交通省と水資源機構の全国111ダムで配布が始まったが、その後参入する事業者(主に自治体)が右肩上がりに増え、2015年4月現在、配布ダムの数も400カ所以上に増えている。

 また、ダムカードの成功を見て、全国のさまざまな施設(たとえば国道、橋、ロープウェー、土木遺産、さらには病院など!)でダムカードを模したカードが作成されるという面白い現象も起こっている。

 ダムカードと同じく、現在、ダムめぐりの際に欠かせないのがダムカレーである。ダムカレーとは、ライスをダムに見立ててカレールーを堰き止めたもので、もともとは黒部ダム近くのレストランで提供されていたものを、都内でレストランを経営するダム好きが大幅に改良したところ人気メニューになった。その人気に目をつけ、いまや全国各地のダム近くの飲食店で、さまざまな趣向を凝らした「ご当地ダムカレー」が販売されており、ダムに来た観光客のお腹を満たしている。

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