建築からヴォーリズ精神を伝える NPO法人ヴォーリズ建築保存再生運動一粒の会
優れた建築を見ることを好む人は多い。しかしその見方は人によってさまざまだ。建築関係の仕事や、専門的な勉強をしてきた人は、興味のある部分を細かく見たいと考える人も多い。しかし専門家ではない場合、見て雰囲気を感じるとすぐその場を離れる人も多い。説明看板などを読んでもよくわからないために見方がわからず、もう少し深く知ってより楽しむ機会を逃している人もいるだろう。そこで今回は、再生させた建築の魅力をより多くの人に、わかりやすく伝える活動をしている方々を紹介する。
近江八幡市は近江商人のまちなみや八幡堀などの観光で知られるが、このまちなみに溶け込む近代建築が今も多く残る。ウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計した建築だ。ヴォーリズはコロラド大学で哲学を学び、1905(明治37)年に滋賀県立商業学校の英語教師として近江八幡にやってきた。2年後に教職を離れた後も、ヴォーリズは近江八幡にとどまり、キリスト教の伝道と、その主義を伝える建築設計、医療、製薬、教育などさまざまな事業を行った。
ヴォーリズの建築が多く残る近江八幡で、これらの保存再生や活用を行っている団体の一つがNPO法人ヴォーリズ建築保存再生運動一粒の会だ。近江八幡市でのシンポジウムなどをきっかけに1998年に活動を始め、倉庫のようになっていた旧八幡郵便局を年月をかけて清掃し、正面ファサードを復元再生するなどして、見学できる形に改修した。
旧八幡郵便局
現在、会では旧八幡郵便局を、火曜日を除く午前10時から午後3時まで開館している(不定休あり)。会員や有志がボランティアで、交代で建物に詰め、訪れた人に建物の説明をしている。また、近江八幡のヴォーリズ建築の情報発信や、この旧八幡郵便局を活用したイベント、地域のイベントへの参加、他団体との交流なども行っている。
「ヴォーリズ建築のことを多くの方に知ってほしい」と話す会の皆さん。彼らは建築の魅力をどのように伝えているのだろうか。そして皆さんの話からは、さまざまな建築を活用する際の課題も見えてきた。
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