石見銀山で中国人観光客のニーズを探る   大田市観光振興課キョウグンさんに聞く

2016.04.01島根県

 島根県の中央部に位置する大田市は、2007年に世界遺産となった石見銀山遺跡をはじめ、国立公園三瓶山や温泉津温泉、仁摩サンドミュージアムなどの観光資源を有し、年間100万人以上の観光客が訪れている。近年では欧米からの観光客に加え、台湾、韓国、中国などアジアからの観光客が増加していることから、受け入れ環境の整備を進めている。

 そんな中、2013年に上海出身のキョウグンさんが大田市の嘱託職員として採用され、交流事業などで中国語圏から訪れた観光客のガイドや、観光情報の翻訳などで活躍している。また、中国語版フェイスブックを開設し、市の情報発信にも取り組んでいる。

 中国人観光客は日本のどんなところに魅力を感じているのか、キョウさんが日本に魅力を感じ、大田市観光振興課で働くようになったいきさつなども含め話を伺った。

キョウグンさん
キョウグンさん

 キョウさんは上海の大学で日本語を専攻し、日本語能力試験で優秀な成績をおさめたことから、国際交流基金関西国際センターが実施する日本語学習者訪日研修に招待され、2000年に初めて日本を訪れた。

 滞在中で一番感動したことは、日本人の接客態度だった。キョウさんたちの姿が見えなくなるまで見送ってくれたり、わからないことを聞くと親切に説明してくれた。街では人通りが多い場所でもごみは少なく、貧富の差がないように感じた。そうした体験がきっかけで日本で働いてみたいと考えるようになった。
 帰国後は上海で就職したが、夢をあきらめきれず自力で情報収集し、島根県立大学を受験した。

 大学生活は授業への出席や修士論文の作成、翻訳のアルバイトなど、睡眠時間もままならないほど忙しい日々を送るが、海や山に囲まれた自然豊かな環境や周りの人の温かさに触れ、県内での就職を希望し、大学関係者の助言から大田市の採用面接を受け、見事採用された。

 採用後、キョウさんは観光振興課に配属された。主な業務は県などが旅行会社やメディアなどを招致したときに通訳として観光地を案内することだ。

 しかし、実際に始めてみると、人が説明したことを理解し、正しく解釈して中国語に訳す難しさを実感した。そこで石見銀山についての知識を深め、通訳に生かそうと「石見銀山ガイドの会」で養成講座を受講し観光ガイドになった。キョウさんは休日を利用して石見銀山を訪れた日本人や中国人の観光客に自分の言葉で魅力を伝えている。また、大田市以外の近隣の観光地に同行する機会も増え、「参勤交代」や和紙の原料で使われている「楮(こうぞ)」などのような専門的な言葉に触れる機会も増えた。現在は「山陰地域限定特例通訳案内士」の養成研修を受講し、日々勉強を重ねている。

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