魅力向上につながるトイレの整備 日本トイレ研究所加藤篤さんに聞く

加藤篤特定非営利活動法人日本トイレ研究所代表理事

2016.07.19

観光地のトイレを面的に考える

 改善すべきトイレとして男女ともに多かったのが、公衆トイレ、駅のトイレ、公園のトイレです。逆に、デパートや宿泊施設、テーマパークなど、トイレの整備がサービスにつながる施設を挙げた人は少数でした。

 きれいにしてもあまり褒められず、汚いと怒られる公共のトイレが、多くの課題を抱えていることが分かりました。

トイレの困りごと
改善対象として、公衆トイレ、駅、公園のトイレが多かった。「トイレの困りごとを教えてください!」アンケート(NPO日本トイレ研究所)より

 観光地は、地域内を自由に移動することで成り立ちます。スポーツ、自然体験、飲食など地域全体で魅力を打ち出すことが大切で、そう考えると移動拠点に欠かせないトイレを面的に整備していくことも重要になります。
 見直しには3つのポイントがあります。

 1つ目は、面的な配置です。ある道沿いには公衆トイレが並ぶように集まっているのに対し、他のエリアにはトイレが全くないという状況もあります。また、交通事情が色々と変わっている中で、橋のたもとなど昔の交通要所だった場所にいまだにトイレがあるケースも見られます。エリアの中での適正なトイレの配置の見直しが必要です。

アンケートでの困りごと
アンケートでの困りごと(抜粋)

 2つ目はトイレのスペースです。多機能トイレの設置は増えていますが、1つしか設置していない場合が多いです。多機能トイレの利用者は、車イスの人、視覚障がい者、介助が必要な人、人工肛門などの内部障がい者、トランスジェンダー、ベビーカーを持つ人などさまざまで、利用時間も長くなり、混んでいることも、アンケートから分かりました。

 車イスの利用者でも、あれだけのスペースを必要としない人もいます。基本的に日本のトイレは狭いので、もし一般用のトイレのスペースがもう少し広く、車イスやベビーカー、旅行用トランクを持った人でも入れるくらいのスペースになれば、もっと使いやすくなるはずです。

 3つ目はトイレの使い方の情報です。具体的にはボタンがいっぱいありすぎてわからない、温水洗浄便座などマークの意味が分からないという意見です。また、視覚障がい者の方からは、緊急呼び出しボタンと洗浄ボタンの区別がつかず、いつもドキドキしながら押しているという声もありました。

 また、外国人の中には、和式トイレの上に座ってしまう人や、自分たちの国の習慣でお尻を拭いた紙を流さない人もいます。トイレに入って悩まないように、きちんと情報を伝えることが必要です。

トイレアンケート
アンケートでの外国人の困りごと(抜粋)

自治体では洋式化に高い意識

 2016年3月に、国立公園がある自治体を対象にしたアンケートを実施しました。観光トイレ設備の重要性については、「洋式化」「車イス対応」に次いで、「多言語対応」や「トイレの使い方表示」にも高い意識を持っていることが分かりました。

自治体トイレアンケート
国立公園がある自治体を対象にしたアンケート。観光トイレの整備の重要性として、洋式化、車イス対応、多言語対応を挙げたところが多かった

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