言葉の壁は高くない、自信を持っておもてなしを ―インバウンド客に腰が引けている飲食店

香坂玲東北大学大学院 環境科学研究科教授

2016.02.16石川県

外国語への不安で、自ら高い壁を築いている!?

 インバウンド観光客が味や接客に大きな不満がないにもかかわらず、なぜ飲食店は腰が引けているような状況なのか。

 金沢の飲食店33軒に聞いたところ、「積極的に外国人観光客を呼び込もうとしているか」という質問に対して、8割以上の店が、「外国語への不安」を主な理由として「いいえ」と回答した。

 実際には、インバウンド観光客はサービスや店内でのサービスに強い不満は抱いておらず、飲食店へのアンケートからは、自らが「語学の壁」を築いている実態が浮かび上がる。店員は注文を受けるという最低限のレベルをクリアしていればよく、飲食店側が過剰に「流暢でなければならない」と感じている杞憂の可能性も高く、味やサービスに自信を持って接客することが重要となる。

環境整備、情報発信でリピーターづくり

金沢市民の台所、近江町市場にも多くの外国人観光客が訪れる金沢市民の台所、近江町市場にも多くの外国人観光客が訪れる

 サービスの改善に向けて、Wi-Fi環境などが整うという前提で英語や中国語でのメニュー表記やSNSを取り入れた発信が重要となろう。

 Visit Japanの助成金などを活用しながら、名古屋市・金沢市・高山市などミシュランガイドに掲載された都市で、共同で中国系のブロガーを招く取り組みなどがある。
 宿泊が郊外になりがちな団体客ではなく、今後増加が見込まれる個人旅行客向けのインバウンド客にも、パンフレット類などの紙ベースだけではなく、中国、東南アジアで使用されるSNSなどに対応しながら発信していく体制づくりが欠かせない。

 今後、国土交通省は地方での周遊ルートを創設し、名所同士の道路や空路を結びながら、Wi-Fi環境、単語メニューの拡充に努めていくとしている。
 標識の多言語対応へのガイドラインが策定され、県なども飲食店等を支援するソフトウェアを提供している。

 また官公庁や個別業界の枠を超えて、地域のなかでの人の流れを作り出す日本版DMO(Destination Management Organization)が各地で発足している。新幹線というハード面での追い風を生かし、近接する県などと広域で連携しながら、海外の観光客が繰り返し来てくれる地域づくりを期待したい。

■リンク
日本政策投資銀行・金沢大学香坂玲研究室 (2013) 食に関する外国人客と飲食店とのギャップ調査(もっと自信を持っておもてなしを)http://www.dbj.jp/pdf/investigate/area/hokuriku/pdf_all/hokuriku_1303_03.pdf(アクセス日 2016/1/28)
日本政策投資銀行・日本交通公社(2015) DBJ・JTBF アジア8地域・訪日外国人旅行者の意向調査(平成27年版)http://www.dbj.jp/pdf/investigate/etc/pdf/book1510_01.pdf(アクセス日 2016/1/28)

■引用文献
Kohsaka,R. Matsutani,H. Matuoka,H. Tomiyoshi,M. (2015)
Tourist Expectations:A Comparative Study between Non-Asian and Taiwan /Hong Kong tourists in Kanazawa, Japan
旅游期望:在日本金沢市旅遊的非●洲旅客及台湾/香港旅客的比■研究
(●は「並」の上の二つの点がないもの、■は「較」の意味)
Journal of China Tourism Research, Volume 11, Issue 2, 2015, pp.186-199 DOI:10.1080/19388160.2015.1035469
http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/19388160.2015.1035469?journalCode=wctr20

著者プロフィール

香坂玲

香坂玲東北大学大学院 環境科学研究科教授

東京大学農学部卒。ドイツ・フライブルク大学森林環境学部修了。博士(森林経済学)。
国連環境計画(UNEP)生物多様性条約事務局(カナダ・モントリオール)勤務、名古屋市立大学を経て、現職。
専門は、地域創造学、森林経済学、環境教育・環境マネジメント論。
2008年~2010年、名古屋でおこなわれたCOP10(第10回生物多様性条約締結国会議)支援実行委員会アドバイザーを務める。国連大学高等研究所客員研究員。地理的表示活用ガイドライン(農林水産省補助事業)や地理的表示保護制度推進事業検討委員会座長、白山菊酒呼称統制機構の委員。

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