よりよき観光文化の継承にむけて 第2回 地域資源と観光資源
地域資源からの発想
地域に定着した食ということでは、郷土料理があります。日本観光振興協会の情報収集における区分として郷土料理は、地域性のある観光的に魅力のある料理をいう、としています。これは郷土料理の定義ではありません。郷土料理は、観光的に魅力のあるものだけではないはずです。観光地において食事をする場所や環境の一つとして、郷土料理店というのがあります。地元にある郷土料理店というと、どちらかというと観光客のためという位置づけが強く、あまり地元の人が行くところではない場合が多いと思います。
たこ料理が名物のまちで、役所の方に観光客がたこ料理を食べられる店は?と聞くと、3軒くらいという回答でした。その後タクシーの運転手さんを対象にアンケートを行い、観光客に紹介できるたこ料理の店は、と問うと47軒の店の名前が挙がってきました。
この違いは、観光客という枠とたこ料理という枠の設定の違いです。観光客という視点と住民という視点のどちらから見るかという違いともいえます。さらにいえば、観光資源から考えるのか、地域資源から考えるのかの違いであるともいえます。素材や環境そして提供の仕方など観光客にとってある程度の価値を有し提供しているものから考えるのか、地域にあるものすべてから考えていくのかということです。観光関係者は前者、地域おこしや地元の人から発想するときは後者が多いと思います。ニューツーリズムを新たな観光振興の方向と考えるのであれば、それは後者からの発想ということになります。
地域資源の来訪目的資源化
新たな観光振興の方向を考えるとき、観光地は観光資源から成り立っているという構図から、地域は地域資源から成り立っているという構図を意識することが大切です。はじめから観光という価値から地域資源を見てしまうと、①地域資源の新たな可能性が見えてこないこと、②可能性のある地域資源を見落としてしまうこと、そして最も大切だと思われる③地域資源の可能性を広げる・価値を高めるという努力をしなくなること、などが起こります。
地域資源を見据え、地域資源を来訪目的化することにより、地域は目的地となります。この目的地づくりという視点が、地域における新たな観光振興の方向性を生み出してくれます。観光資源を今一度地域資源に立ち戻らせることも含めて。
観光振興には温泉、は常套句になっていますが、地域振興には温泉、という視点から始めると、エネルギー活用としての温泉、農林水産業・工業などにおける産業活用としての温泉、生活利用としての温泉、医療としての温泉、飲食利用としての温泉、科学や地質など教育教材としての温泉等々さまざまな利活用が見えてきます。
結果、これら温泉の地域資源としてのすばらしい活用をしているところこそ、われわれが今求めている温泉観光地の姿といえるのではないでしょうか。従来型観光地の再生・活性化はこうした新たな視点を取り入れるところにあると思います。従前からあった考えではありますが。
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